歯科で薬をだされる際、飲んでいる薬がある場合、飲み合わせ、大丈夫?
2026年8月4日

持病などで、病院で処方された薬を服用している方が歯科治療を受けるとき、新しく出される薬と一緒に飲んで問題はないだろうか?と不安になることがあるとおもいます。
このように感じることは、ごく自然なことだと思います。とくに高血圧、糖尿病、心疾患、骨粗しょう症、うつ病などで継続的に内服している場合、その心配はより現実的になります。
結論からいうと、多くの場合は適切な確認のもとで安全に併用できると考えています。
ただし、服用している薬を正確に歯科医師へ伝えていることが前提です。飲み合わせの安全性は、情報共有があってこそ担保されるからです。
歯科で処方される薬との相互作用

歯科でよく処方される薬には、抗菌薬という抗生物質、鎮痛薬という痛み止めや、消炎薬などがあります。
これらは短期間の使用が中心ですが、体内で代謝や排泄がされる以上、他の薬との相互作用が起こる可能性は理論上存在するはずです。
近年の研究では、歯科患者の中に複数の薬を同時に服用している例が多く認められ、薬物相互作用の潜在的リスクが一定数認められることが報告されています(歯科患者における薬物相互作用の検討、デンティストリー・ジャーナル2025年)。
さらに、この研究では、特に高齢者や基礎疾患を有する患者において相互作用の可能性が高い傾向が示されています。
また、米国歯科医師会雑誌に掲載された歯科における薬物相互作用2004年でも、歯科臨床において抗菌薬や鎮痛薬と内科処方薬との相互作用に注意を払う必要性が強調されています。
抗菌薬と抗凝固薬

抗菌薬のうち、ペニシリン系薬剤は腸内細菌叢に影響を与えることで、ビタミンKの産生に変化をもたらす可能性があります。
その結果、血液を固まりにくくする抗凝固薬(ワルファリン、ワーファリン)を服用している場合、出血傾向が強まる可能性が指摘されています(歯科治療時に留意すべき薬剤投与、日本歯科医療研究論文集)。
また、近年多く使用されている直接経口抗凝固薬については、従来のワルファリンとは作用機序が異なり、相互作用の様式も異なるといわれています。理由はどうあれ出血リスクを踏まえた判断が必要です。
鎮痛薬と血圧と腎機能への影響

歯科でよく使用される非ステロイド性抗炎症薬は、鎮痛効果に優れるものの、腎機能や血圧に影響を与える可能性があるといわれています。また、高血圧治療薬や利尿薬を服用している場合、理論上にはなりますが、血圧コントロールに影響する可能性があると考えられます。
臨床口腔医学研究に掲載された報告(2022年)では、歯科治療における潜在的薬物相互作用の頻度が解析され、非ステロイド性抗炎症薬が比較的高頻度で相互作用する候補として挙げられています。
そのため、出血リスクや基礎疾患を考慮した場合、アセトアミノフェンなど別の鎮痛薬が選択されることがあります。
局所麻酔薬と循環器系薬剤

歯科麻酔に含まれる血管収縮薬(アドレナリンなど)は、心拍数や血圧に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、心疾患、不整脈、高血圧で治療中の患者では、投与量や麻酔薬の種類を調整することで安全性を確保します。
これも事前の情報共有があってこそ可能になる対応になります。
骨粗しょう症治療薬と外科処置

骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤やデノスマブなど)を使用している場合、抜歯などの外科的処置後に顎骨壊死が生じる可能性があることが国内外で報告されています。
これは単純な飲み合わせではありませんが、歯科治療に大きく関わる重要な情報となります。
日本口腔外科学会の報告でも、これらの薬剤使用患者に対する治療前評価の重要性が強調されています。
薬を自己判断で中止しない

ここで重要なのは、自己判断で内服薬を中止しないことです。抗凝固薬や心血管系薬剤を急に止めることは、血栓症など重大なリスクを伴います。
現在では、多くの歯科処置は抗凝固薬を中止せずに実施する方が安全と考えられています。
情報共有こそ最大の安全策

複数の研究に共通して示されているのは、薬物相互作用のリスクは、医療者が服薬状況を正確に把握することで大幅に低減できるということです(歯科患者における薬物相互作用の検討2025年)。
お薬手帳の持参、現在服用している薬の申告、市販薬や健康食品も含めた情報提供などは、すべて、安全な歯科治療を受けるための重要な行為です。
「飲んでいる薬があるのですが、大丈夫でしょうか?」
その一言が、医科と歯科をつなぎ、治療の安全性を高めます。不安を抱えたままにせず、遠慮なく相談してください。ほとんどの場合、適切な確認のもとで安心して治療を受けることができます。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
引用論文一覧
- 「歯科患者における薬物相互作用の検討」『デンティストリー・ジャーナル』第13巻、2025年
- 「歯科における薬物相互作用」『米国歯科医師会雑誌』2004年
- 「歯科診療における潜在的薬物相互作用の頻度と特徴」『臨床口腔医学研究』2022年
- 「歯科治療時に留意すべき薬剤投与」日本歯科医療研究論文集
- 日本口腔外科学会関連報告(骨吸収抑制薬と顎骨壊死に関する報告)
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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