オールオン4ではなく、オールオンXなら大丈夫?
2026年6月2日
オールオン4について調べていくと、多くの方がたどり着く疑問があります。
インプラントの本数を増やした“オールオンX”なら安心ではないのか?
4本が不安なら、5本、6本、あるいはそれ以上なら、どうなのか?
本数を増やせば、負担は分散され、無理は減るはずであるから。
実は、この考え方は、とても自然で、実は生体力学的にも正しい方向性なのです。
では、オールオンXなら本当に“大丈夫”と言えるのか、検証していきましょう。
そもそもオールオンXとは何?
まず前提として、オールオンXは正式な治療名ではなく、通称になります。
一般的には、どれが対象となるのかというと、オールオン4より多い本数であるものや、片顎5本、6本、あるいはそれ以上のものや、固定式のフルアーチ補綴のもの、こうした設計をまとめて、便宜的に「オールオンX」と呼んでいます。
つまり、考え方はオールオン4と同じ流れにありながら、設計の自由度が高くなった治療とお考えください。
生体力学から見ると方向性は良い
結論の一部を先に述べると、生体力学の観点では、オールオンXはオールオン4よりとても有利です。
理由は非常にシンプルで、支える本数が増えて、1本あたりの負担が減り、力が分散されるこらです。
他のブログにも書きましたが、これは歯科だけでなく、橋や建物など、すべての構造物に共通する原則です。
実際、有限要素解析(FEM)を用いた研究では、インプラント本数を増やすことで、インプラント周囲骨や補綴装置にかかる力が減少することが示されています。(ハーバード大学関連研究、Frontiers in Bioengineering and Biotechnology など)
この意味で、4本より5本、5本より6本という考え方自体は、理にかなっているのです。
ただ、問題がゼロになるわけではない
ただし、ここで重要なのは、オールオンXは、問題を消す治療ではなく、問題を減らす治療になります。
なぜなら、本数を増やしても、インプラントそのものの性質は変わらないからです。
天然歯とインプラントとの違い
他のブログにも書きましたが、天然歯には歯根膜というクッションのような組織があり、噛むたびに歯がほんのわずかに動き、衝撃を和らげて、力を分散してくれます。
それに比べて、インプラントは骨と直接結合しています。
これは、スウェーデン・ヨーテボリ大学のBrånemark教授らが確立したオッセオインテグレーションという概念に基づくものであり、この結合は非常に強固ですが、歯根膜が存在しないという特徴があるのです。
つまり、動かない、しならない、力を逃がせない、という性質は、オールオン4でも、オールオンXでも同じになります。
カンチレバーを日常の言葉で考える
ここで、多くの方が分かりにくいカンチレバーについて解説しましょう。
カンチレバーとは、支えのない部分が、外に張り出している構造のことです。
たとえば、壁から突き出た棚や、ブランコの板や、物干し竿の端などになります。
これらを想像すると、支点(支え)から離れた場所に力をかければかけるほど、支点には何倍もの負担がかかるようになります。
オールオン4では、奥歯の位置にインプラントを十分置けない場合、支えの外側や、奥側で噛む構造になりやすいわけです。
これが、口の中で起きるカンチレバーになります。
オールオンXで、何が改善されるの?
オールオンXの大きな利点は、奥歯側に支えを増やせる可能性が最大のメリットになります。
これにより、支えのない張り出しを短くできたり、力のかかり方を穏やかにできるのです。
つまり、無理な場所で噛まなくて済む設計に近づけることができるということになります。
多くの研究で、カンチレバーが短い、あるいは小さい設計ほど、機械的トラブルや骨への負担が少ない傾向が示されています(リスボン大学、ハーバード大学関連研究)。
それでも完全に問題ゼロとはならない
ただし、骨の量や解剖学的制約によっては、オールオンXでも、完全に張り出しをなくせないケースがあるのです。
また、咬合力が非常に強いケース、食いしばりがあるケース、噛み合わせの設計が不適切なケースが重なると、本数を増やしても、力の集中は起こってしまいます。
Xの中身が説明されているか重要
患者さんには、必ず確認してほしいことがあります。それは、「なぜ、そのXの設計なのか」です。
信頼できる説明では、なぜ4本では足りないのか、なぜ5本(または6本)なら良いのか、どの歯が、どの力を受け持つのかとか、こうした話が、具体的に語られるはずなのです。
逆に、「本数を増やしたから安心です」という説明だけの場合は、設計の話が十分でない可能性が疑われます。
オールオンXでも、20年問題なかった、は条件付き
オールオンXについても、20年近く安定している症例は存在しますが、症例があることと、誰にでも当てはまることは別だ、ということは忘れないでください。
論文では常に、適切な症例選択や、継続的メンテナンスといった前提条件が必ず、添えられているものです。
結論として、
オールオンXは、生体力学的にはオールオン4より合理的ですが、絶対に大丈夫とは言えるものではありません。
本当に大切なのは、なぜ、その本数であり、配置であり、噛み合わせの設計なのか、また、将来の修正や再治療の余地の有無を含めて説明されているかどうかなのです。
最後に
オールオン4は不安。では、オールオンXなら?
この問いは、より良い治療を選ぼうとしている証拠ですね。
「Xだから安心」ではなく、「なぜ、そのXなのか」を一緒に考えてくれる歯科医師を選んでもらえると、安心ですね。
それが、10年後、20年後の自分を守る、自分の未来を守る、いちばん現実的な方法となり得るのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Brånemark P-I et al.
Osseointegration and its experimental background
University of Gothenburg(ヨーテボリ大学) - Malo P, Rangert B, Nobre M.
All-on-4 concept for full-arch rehabilitation
Lisbon University / Nobel Biocare - Papaspyridakos P et al.
Complications and survival rates of full-arch implant-supported prostheses
Harvard School of Dental Medicine 関連 - International Journal of Implant Dentistry(Springer Nature)
Long-term outcomes of full-arch implant-supported prostheses - Frontiers in Bioengineering and Biotechnology
Biomechanical comparison of All-on-4 and All-on-5 using finite element analysis
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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