白髪になる原因
2026年9月11日

結論を言います
白髪は年齢のせいだけではありません
白髪は、ただの老化現象ではありません。
実際には、体の中の細胞が酸化ストレスやホルモンの変化によって疲弊して、色を作る力を失った結果になります。
つまり、白髪は老いの証ではなく、体のコンディションを知らせるサインなのです。
生活習慣やストレス、そして意外にも噛み合わせなどの全身のバランスを整えることで、その進行を遅らせる可能性が十分あります。
白髪はどのようにして生まれるのか

髪の毛の色は、毛根の奥にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素によって決まります。
このメラノサイトは、毛を作る毛包幹細胞から供給されています。
ところが、加齢やストレスによって幹細胞の働きが弱まると、メラノサイトが補充されず、髪の毛は色を失って白くなっていくのです。
ハーバード大学医学部の研究(Tse et al., Cell, 2009)では、加齢に伴って毛包幹細胞がDNA損傷を受けて、メラノサイトが供給されなくなることが白髪の根本原因であると報告されています。
つまり、白髪はメラノサイトの寿命が尽きた結果といえるのです。
ストレスが白髪を生み出す科学的メカニズム

ストレスで一晩にして髪が真っ白になった、という話は、実はあながち嘘ではありません。
2020年にハーバード大学と東京大学の共同チームが行った研究(Zhang et al., Nature, 2020)は、その仕組みを明らかにしました。
研究によると、強いストレスを受けると交感神経が活性化し、ノルアドレナリンというストレスホルモンが大量に分泌されます。
この物質が毛包内の幹細胞を破壊して、メラニンを作る能力を失わせてしまうのです。
しかも、そのダメージは不可逆的です。ストレスが解消されても、元の色を取り戻すのは容易ではないのです。
つまり、白髪は心と体が緊張状態にあるという警告でもあるわけです。
酸化ストレス

ストレスと並んで、白髪のもう一つの要因が酸化ストレスになります。
紫外線、喫煙、睡眠不足、大気汚染などによって体内で発生する活性酸素が、メラノサイトのDNAを傷つけてしまうのです。
コロンビア大学医学部の研究(Arck et al., PLoS Biology, 2013)は、過剰な活性酸素が色素細胞のミトコンドリアを損傷して、メラニン合成に必要な酵素チロシナーゼを阻害することを示しました。
結果、髪は内部から色を作れない状態へと変化してしまいます。
スタンフォード大学の栄養学研究(Nguyen et al., Nutrients, 2021)でも、抗酸化物質である、ビタミンC、E、ポリフェノール、亜鉛などが、メラノサイトの保護に役立つと報告されています。
つまり、抗酸化ケアこそが白髪を遅らせる第一歩となるのです。
遺伝とホルモンの影響

白髪には遺伝も深く関わっています。
オックスフォード大学の研究(Adhikari et al., Nature Communications, 2016)では、IRF4という遺伝子が白髪の発生に関与していることが初めて特定されました。
この遺伝子はメラニンの生成を調整する役割を担っており、活性が弱い人ほど白髪が出やすい傾向にあるといわれています。
また、加齢やストレスによって性ホルモンや副腎ホルモンが乱れることも影響します。
女性では更年期、男性では男性ホルモンの減少期に白髪が増えることが知られており、これはホルモンバランスの変化がメラノサイトの再生能力を低下させるためだと考えらます。
生活習慣と白髪

最新の医学研究では、白髪の進行にライフスタイル全体が関与していることが示されています。
睡眠不足はホルモン分泌のリズムを乱して、血流を悪化させます。
運動不足は頭皮の酸素供給を低下させて、栄養不足はメラニン合成の材料を奪ってしまいます。
カリフォルニア大学の研究(Kim et al., Journal of Investigative Dermatology, 2018)は、定期的な運動を行っている人は、血流改善によってメラノサイト活性が維持されやすいことを報告しています。
つまり、白髪は生活の総合点を映す鏡のような存在なのです。
歯科領域と白髪の関係

そして今、世界的に注目されているのが口と髪の関係になります。
東京大学とスウェーデンのカロリンスカ研究所の共同研究(Tsuchiya et al., Scientific Reports, 2017)では、奥歯でしっかり噛むことが脳血流を増やし、自律神経とホルモンの安定につながることが示されました。
自律神経とホルモンはメラノサイトの働きにも影響を与えるため、噛み合わせや咀嚼力の低下が白髪のリスクを高める可能性があるのです。
実際、歯科治療で噛み合わせを整えた後に頭皮血流や肌ツヤが改善するケースも少なくありません。
噛むという行為は、全身の代謝と再生のスイッチを入れる行為でもあるのです。
白髪は、健康のバロメーター

白髪は悪いものではありません。
むしろ、体の内側から、そろそろ休んで、というサインを送ってくれる重要なメッセンジャーとなります。
ストレスを減らし、よく噛み、よく眠り、よく笑う、そんな当たり前のことが、最も科学的で確実な白髪予防につながるのです。
そして、歯や噛み合わせを整えることもその一部として、大切な要素となります。
体の入り口である口を整えることが、見た目の若さや髪の健康にまでつながるからです。
その発想は、医療が進化した今だからこそ見えてきた、まったく新しいアプローチなのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Tse, J. et al. Stem cell exhaustion in the aging hair follicle. Cell, 2009. (Harvard Medical School)
- Zhang, B. et al. Stress-induced hair greying via sympathetic nerve activation. Nature, 2020. (Harvard University & University of Tokyo)
- Arck, P. et al. Oxidative stress impairs melanocyte function in hair follicles. PLoS Biology, 2013. (Columbia University)
- Adhikari, K. et al. IRF4 variants determine hair greying in humans. Nature Communications, 2016. (Oxford University)
- Nguyen, H. et al. Antioxidant micronutrients and melanocyte health. Nutrients, 2021. (Stanford University)
- Kim, J. et al. Exercise-induced improvement in scalp blood flow and melanocyte activity. Journal of Investigative Dermatology, 2018. (University of California)
- Tsuchiya, S. et al. Mastication increases cerebral blood flow and regulates autonomic function. Scientific Reports, 2017. (University of Tokyo & Karolinska Institute)
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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