重度の虫歯の人は心臓病になる?!
2026年9月8日

結論をいいます
虫歯を放置すると、心臓にも炎症が届きます
虫歯と心臓病、一見まったく関係がないように見えるのですが、この二つが、実は深くつながっていることが最近の研究で、わかってきました。
重度の虫歯を放置している人ほど心臓病の発症率が高いという報告が相次いでいるのです。
虫歯の炎症が血液に乗って体をめぐり、血管や心臓に静かな炎症を起こしてしまうのです。
つまり、歯の小さな穴が、時間をかけて心臓の血管を詰まらせる引き金になることがあるというわけです。
虫歯は歯の穴ではなく、感染症

虫歯は、ミュータンス菌などの細菌が糖を分解して酸を作り、歯を溶かす感染症です。
初期のうちはエナメル質が溶けるだけですが、進行すると歯の神経や根の奥まで細菌が侵入していきます。
そこで膿がたまり、歯の根の先に炎症ができると、細菌や炎症物質が血液の中に入り込むようになるのです。
血流に乗った細菌や炎症物質は、次第に心臓や血管へと届いてしまうのです。
虫歯は、歯だけの病気ではなく、体の中に炎症を広げる感染症という見方もできるのです。
虫歯菌は血液を通じて心臓にたどり着く

心筋梗塞や狭心症などの心臓病は、血管の内側に炎症や脂肪がたまって血流が悪くなる動脈硬化が原因で起こります。
東京医科歯科大学と筑波大学の共同研究では、心筋梗塞を起こした患者の血管の中から虫歯菌のDNAが検出されました。
つまり、虫歯菌が血流に乗って心臓の血管に入り、炎症を起こしていたと思われるのです。
どつしても、虫歯は口の中の問題と思いがちですが、実は全身の血管にまで影響を与える病気なのです。
虫歯菌は血管を傷つけ、詰まらせる

中でも血管の内壁にくっつきやすい虫歯菌があり、それらは、血を固める血小板と結びつく性質があります。
大阪大学の研究によると、この菌を実験動物に注入すると、数時間のうちに心臓や脳の血管に炎症と小さな血栓(血のかたまり)ができたと示されています。
つまり、虫歯菌はただ歯を溶かすだけでなく、血管を傷つけて炎症を広げて、動脈硬化を進める力を持っているのです。
慢性炎症が心臓の免疫を狂わせる

虫歯などの炎症が長く続くと、体の免疫は常に警戒状態になります。
ハーバード大学の研究では、口の炎症が続く人ほど心臓の血管で炎症が起こりやすくなることが示されています。
免疫細胞は、異物を排除して体を守るものですが、過敏になると自分の血管まで攻撃してしまうのです。
その結果、血管の壁が厚く硬くなり、動脈硬化が進んでしまうのです。
言い換えれば、虫歯があると、心臓が炎症体質になりやすいといえます。
世界の研究が示す、虫歯と心臓病の関係

フィンランドの1万人規模の調査では、虫歯を放置していた人は、心臓発作のリスクが約1.6倍といわれています。
また、スウェーデンの長期研究では、虫歯が4本以上ある人の心臓病による死亡率が2倍に達していました。
これらの結果が意味するのは、虫歯そのものが直接心臓を壊すというよりも、慢性的な炎症が血管の老化を早めるということなのです。
虫歯は動脈硬化の引き金になるのです。
虫歯菌が引き起こす感染性心内膜炎

虫歯菌が血流に乗って心臓に届くと、もう一つ恐ろしい病気を引き起こすことがあります。
それが感染性心内膜炎です。
心臓の弁に細菌が付着して炎症を起こし、高熱や心雑音を伴う命に関わる病気です。
日本の研究によると、この病気の患者の3人に1人が未治療の虫歯や歯の根の感染を持っていたと報告されています。
人工弁や心臓病の既往がある人は、虫歯の治療時に菌が血液に入ると重症化しやすいため、抗菌薬をあらかじめ投与して予防することもあります。
虫歯と歯周病のダブル炎症は最悪!

虫歯と歯周病はしばしば同時に存在します。
この二つの炎症が重なると、体内の炎症物質が急増し、血管へのダメージが倍増します。
大阪大学の研究では、両方の病気を持つ人の炎症マーカー(CRP値)が、健康な人の約2倍に上昇していました。
高血圧や糖尿病、喫煙などの習慣が加わると、その悪循環はさらに強まります。
つまり、口の中の複数の炎症が心臓病を呼び込む導火線のようなものになるのです。
炎症を治せば、心臓も回復

安心していただきたいのは、虫歯や歯ぐきの炎症を治すと、心臓の炎症も落ち着くことがわかっています。
ハーバード大学とロンドン大学の共同研究では、虫歯や歯周病を治療した患者で、6か月後に炎症の指標(CRP値)が25%低下し、血圧も下がりました。
国内の研究でも、口の中の感染を治療した患者で心臓の機能が改善して、動脈硬化の進行が抑えられたという報告があります。
つまり、歯の治療は心臓の治療でもあるというわけです。
歯を治すことは、命を守ること

虫歯を放置すると、細菌が血液を介して全身をめぐり、心臓の血管や弁膜に炎症を起こします。
結果として、動脈硬化や心筋梗塞、感染性心内膜炎などの感染リスクが高まります。
ということは、虫歯を治し、炎症を抑えれば、心臓への負担は確実に減る可能性があるのです。
一言で言うと、歯を守ることは、心臓を守ることです。
小さな虫歯を放置しないことが、あなたの命を守る最初の一歩となるのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
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- Yamashita, Y. et al. (2022). Jpn Circulation Soc., 86(7), 755–764.
- WHO. (2022). Global Oral Health Status Report.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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