抜け毛と歯の関係
2026年8月18日

結論をいいます
髪は、体の健康を映す鏡である
最近、髪がよく抜ける気がするという、その小さな違和感は、実は体の中で起きている大きな変化のサインかもしれません。
抜け毛は単なる見た目の問題ではなく、ホルモン、ストレス、血流、免疫、そして生活習慣の乱れを反映しています。
髪は全身の状態を敏感に映す健康のバロメーターなのです。
だからこそ、髪のトラブルを正しく理解することは、自分の体を知ることにつながります。
髪が生まれ、そして抜ける生命のリズム

私たちの髪は、1本1本が毛周期というサイクルを生きています。
成長期 → 退行期 → 休止期を経て、新しい髪へと生まれ変わります。
健康な状態では、約9割の髪が成長期にあり、1日に50〜100本程度が自然に抜け落ちます。
しかし、このバランスが崩れると成長期が短くなり、再生が追いつかず、抜け毛が目立つようになります。
それは、体の内部にある見えない歯車がバランスを狂い始めている合図だと考えられます。
ホルモンが左右する毛の寿命

抜け毛の背景で最も知られているのが、ホルモンの影響です。
ハーバード大学医学部の研究(Harvard Medical School, 2001)によると、男性ホルモンのテストステロンがDHT(ジヒドロテストステロン)に変化すると、毛根の成長を抑制し、毛周期を短縮させてしまうことがわかりました。
この現象は男性型脱毛症(AGA)の主な原因ですが、女性でもホルモンバランスの乱れが起こると、同じように抜け毛が増えることがあります。
つまり、髪の衰えはホルモンの乱れが背景にあると考えられます。
ストレスが毛根を枯らす

ストレスで髪が抜けるという言葉は比喩ではありません。実際に起こります。
実際に、ハーバード大学と東京大学の共同研究(Zhang et al., Nature, 2020)では、強いストレスが交感神経を過剰に刺激して、毛包の幹細胞を破壊してしまうことが証明されました。
この幹細胞は、髪の再生を司る生命を生み出す存在であり、ストレスによってそれが失われると、新しい髪が生まれなくなり、抜け毛が一気に進むといわれています。
日常の中で感じる小さな緊張や不安も、積み重なれば毛根を静かに弱らせていきます。
炎症と免疫の暴走

スタンフォード大学の研究(Stanford Medicine, 2014)は、円形脱毛症のような脱毛が免疫の誤作動であることを突き止めました。
本来、体を守るはずの免疫細胞が毛包を敵とみなして、攻撃を始める。
その結果、毛根の環境が炎症で破壊され、髪は抜け落ちてしまいます。
これは一部の疾患だけに限らず、慢性的な炎症を抱える人にも起こり得る現象になります。
例えば歯周病やアレルギー性疾患がある場合、全身の免疫が常に緊張状態となって、毛根にも悪影響を与えることがあります。
血流が止まると、髪も止まる

どんなに健康な毛根でも、栄養が届かなければ育ちません。
オックスフォード大学の研究(Oxford University, 2017)によると、頭皮の血流が乏しい人ほど、毛髪の密度が低下する傾向があることが示されました。
血液は酸素と栄養を毛母細胞に運ぶ生命の線であり、それが滞れば、髪はやせ細り、抜けやすくなります。
冷え性、姿勢の悪さ、肩や首のこり、などはすべて、髪の血流不足を生む原因でもあります。
生活の乱れが引き起こす脱毛

食事が偏る、睡眠が浅い、運動不足、そして喫煙や飲酒、こうした生活習慣の乱れは、髪に影響をおよぼします。
コロンビア大学の疫学研究(Columbia University, 2018)では、慢性的な睡眠不足が毛周期を乱して、抜け毛のリスクを高めることが報告されました。
また、スタンフォード大学の栄養学研究(Stanford University, 2015)は、鉄分、亜鉛、ビタミンB群が不足すると、毛を作るケラチンの合成が滞ることを明らかにしています。
つまり、抜け毛は体全体のSOSともいえるのです。
歯科領域と抜け毛

髪の健康と歯との関係、一見、まったく関係なさそうに見えるかもしれませんが、近年の研究では、関係がわかってきています。
東京大学とスウェーデン・カロリンスカ研究所の共同研究(Tsuchiya et al., Frontiers in Neuroscience, 2017)では、奥歯でしっかり噛むことが脳血流を高め、自律神経やホルモン分泌を整えることが確認されました。
この噛む刺激は脳の視床下部にも作用して、ストレスホルモンの過剰分泌を抑える働きがあります。
噛み合わせが乱れている人では、交感神経が常に優位に働き、体が緊張モードから抜け出せないのです。
その結果、毛根の血流が低下して、抜け毛を加速させる可能性があるのです。
歯科治療で噛み合わせを整え、奥歯でしっかり噛めるようになることは、髪の健康を取り戻すための新しい一歩でもあります。
最後に

抜け毛は、頭皮の問題ではなく体の異常を伝えるサインなのです。
ホルモン、ストレス、血流、免疫、栄養、そのどれかひとつでも乱れれば、髪は少しずつ弱っていきます。
ただ、その流れを戻す方法も確かにあります。
ストレスを減らし、体を温め、しっかり噛み、よく眠ること、そんな基本の健康を取り戻すことで、髪はもう一度、内側から力を取り戻していくのです。
そして、歯や噛み合わせを整えることもその大切な要因となるのです。
それは見た目のためだけでなく、体と心のバランスを取り戻す“再生医療”の原点ともいえると考えています。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Harvard Medical School. (2001). The role of DHT in androgenetic alopecia.
- Zhang, B. et al. (2020). Stress-induced depletion of melanocyte stem cells. Nature. (Harvard University & University of Tokyo)
- Stanford Medicine. (2014). Immune privilege collapse and alopecia areata. Nature Medicine.
- Oxford University. (2017). Scalp blood flow and follicular density in aging populations.
- Columbia University. (2018). Sleep deficiency and hair growth cycle disturbances. Sleep Medicine.
- Tsuchiya, S. et al. (2017). Mastication-induced increase in cerebral blood flow. Frontiers in Neuroscience. (University of Tokyo & Karolinska Institute)
- Stanford University. (2015). Nutritional balance and stabilization of the hair cycle. Journal of Nutrition & Metabolism.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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