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郷土料理はなぜ虫歯になりにくいのか

2026年4月17日

郷土料理という古くて新しい歯の味方

きりたんぽ鍋

郷土料理と聞くと、人はどこか温かく、懐かしい気持ちになると思います。

土地に根ざした食材、風土の中で磨かれた知恵、家族との思い出。

それらが優しく重なり合って、ひとつの料理が形づくられている料理。

実は、それだけでなく郷土料理には、もうひとつ別の価値があるのです。

それは、現代人が抱える虫歯という観点に対して、郷土料理が意外にも一定の予防的役割を果たしてきたという点にあります。

もちろん、郷土料理は虫歯を防ぐために生まれたわけではないのですが、料理の素材、味つけ、食べ方にまで視線を広げて見てみると、驚くほど合理的な健康性が宿っていると思われるのです。

虫歯を生む現代食

だらだらとお菓子をつまむ女性

虫歯とは平たく言うと、歯が酸にさらされることで溶けていく現象です。

この酸は、飲料や菓子、加工食品に加えられた砂糖を分解するときに生み出されるのです。

一日に何度も甘い飲み物を口にしたり、お菓子をつまんだり、柔らかく加工された食品を好んで食べる。

そのたびに口の中は酸性に傾いて、歯はダメージを受けていくのです。

しかも、現代の食べ物はベタベタとした粘度が高いものが多くて、一度歯についたらなかなか離れないのです。

こうした残り続ける甘さは、細菌にとっては格好の餌となり、虫歯の進行を加速させるのです。

それに対して、郷土料理には、この現代食の特徴がほとんど見られません。

砂糖をメインとして使用しない味つけ、自然に近い食材、そして間食文化が少なかった生活のリズムがありました。

それらは、実は虫歯を生みにくい環境づくりに大いに役立っているといえます。

伝統食にある、虫歯を遠ざける構造

素材を生かした味付けの煮物

日本の郷土料理は、地域ごとに大きく違うように見えますが、実は、意外なほど共通点があります。

まず第一に、砂糖の使用量が非常に少ないのです。

塩、出汁、発酵の旨味、素材そのものの香りや甘み。それらを重ねて味を出すため、甘味を人工的に加える必要がほとんどなかったのです。

次に、根菜、海藻、豆類、魚介、きのこ、乾物などは、噛むことで味が広がる食材で、加工食品とは異なり、形が保たれたまま口に入ります。

柔らかく甘い食品が多い現代の食生活とは、まったく逆なのです。

そして、調理法にも特徴があります。

揚げ物、濃厚なソース中心ではなく、煮る、蒸す、焼くといった素材の風味を残す調理。

歯に必要以上にからみつかない、この料理の特徴が、口腔内の清潔性に貢献してきたことは、じつは多くの人が気づいていないのです。

咀嚼と唾液

食事をする女性の口元

郷土料理が虫歯になりにくい最も重要な要素のひとつが、よく噛む、という行為になります。

噛むことは単なる食べ方ではありません。

ある意味、口腔内の防御機能を高めるスイッチとなりうるのです。

噛めば噛むほど唾液が湧いてきます。

唾液は酸を中和して、歯の表面にミネラルを戻し、細菌の活動を抑えてくれるのです。

つまり、唾液は天然の治療薬であり、郷土料理はその治療薬の効果を最大限に働かせてくれるものなのです。

大根の煮物を噛むときの歯ごたえ。昆布を口に含んだ瞬間の舌の動き。芋煮の柔らかいものの繊維を感じる歯応え。

こうした現代食では得られない噛む時間が、口の中に豊かな変化をもたらして、歯を守る力を底上げするのです。

現代の食卓では、柔らかく、甘く、飲み込みやすいものが増えた結果、唾液は以前ほど働きにくくなっています。

郷土料理に触れることは、失われつつある身体の知性を呼び戻す行為でもあるのです。

歯に残らないというやさしさ

焼き魚を箸でほぐす様子

虫歯は砂糖だけの問題ではありません。

歯にどれだけ残るのか、口の中に食べ物がとどまる時間がどれくらいか、この2つが実はとても大きいのです。

煮物、汁物、焼き魚、野菜のおひたしは、食べた時に絡みつかない特徴があります。

歯の隙間に粘りつくような現代の食品とは違うのです。

この口の中に食べ物が存在する滞在時間の短さが、酸の産生を抑えて、虫歯の進行を防ぐ上で大きな助けになります。

さらに、郷土料理は間食として摂られることがほとんどなかったといわれています。

食事はまとめて摂って、食事と食事の間には何も口にしないという生活スタイルがかつての日本では一般的だったのです。

これは極めて合理的な生活スタイルだと言えると思います。

甘味化した郷土料理

黒糖をたくさん使用したお菓子

郷土料理にも注意すべき例外があります。

黒糖をたっぷり使う菓子や、保存性を高めるために砂糖を多用する一部の料理、これらは虫歯リスクを上げてしまいます。

ただし、正確にいうと、それは郷土料理そのものの問題ではありません。

郷土料理の原型は、砂糖は控えめで、噛む必要があり、歯に残らず、間食として食べない、という、健康的な要素が明確に存在しているのです。

大切なのは、本来の郷土料理がもっていた知恵を現代の食卓にどう生かすかなのです。

郷土料理が支えてきた口腔の健康

郷土料理を楽しむ女性

郷土料理の価値は、栄養面や文化的背景にとどまりません。

甘さに頼らず、素材を活かして、よく噛んで食事を大切にするというスタイル。

このスタイルは、無意識に虫歯を遠ざける力として働いてきたと言えます。

郷土料理が教えてくれるのは、日頃の食事の積み重ねこそが、歯の未来をつくる、というごく当たり前なのですが、しかし深い真実でもあるのです。

郷土料理、みなさん、食べましょう。

※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。

参考文献

  1. Okada E., et al. British Journal of Nutrition, 2022.
  2. Matsushita E., et al. Nutrition Research and Practice, 2020.
  3. Moynihan P. & Kelly S. WHO Systematic Review, 2014. (要約:Freeman R., Evidence-Based Dentistry, 2014)
  4. World Health Organization. Sugars and Dental Caries: Technical Note, 2025.
  5. Blostein F. A., et al. Community Dentistry and Oral Epidemiology, 2020.
  6. Correa Ramírez A. & Espinoza Santander I. Journal of Oral Research, 2023.
  7. Katsumi N., et al. Nutrients, 2018.
  8. Apostolopoulos A., et al. Applied Sciences, 2023.

この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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