人に会わないと免疫力が下がる ?
2026年7月28日

結論をいいます。
つながりの欠如は免疫の低下を招く。
人と関わらない生活は、科学的にも、免疫力を下げることが、数多くの研究で確認されています。
孤独はストレスホルモンを増やして、免疫細胞の働きを鈍らせ、ウイルスや細菌への抵抗力を弱めます。
さらに、体内では慢性的な炎症が続き、感染症、がん、心血管疾患のリスクを高めることも分かっています。
つまり、人に会わないことは、静かに体の防御力を削いでいくのです。
孤独が免疫を弱める

人と話したり、誰かに会ったりすると、脳内では安心感が生まれてきます。
その一方で、人と会わない生活が続くと、脳は、危険な状態、と認識して、ストレス反応を強めていきます。
このとき分泌されるコルチゾールなどのストレスホルモンが、免疫の司令塔であるリンパ球やナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きを抑えてしまうのです。
UCLAの研究(Irwin, 2016)では、孤独を感じている人ほど抗ウイルス遺伝子の働きが弱まり、逆に炎症に関わる遺伝子が活性化していることが明らかになりました。
その結果、感染に弱く、炎症が続くという免疫のアンバランスが生じてしまいます。
慢性炎症という静かな火事

免疫力が落ちると、ただ風邪を引きやすくなるだけではありません。
体の中では、常に軽い炎症がくすぶり続ける状態である、慢性炎症が起きます。
シカゴ大学の調査(Hawkley, 2008)では、社会的孤立が強い人ほどC反応性タンパク(CRP)という炎症マーカーが高いことがわかっています。
慢性炎症は動脈硬化、糖尿病、がんなどの生活習慣病を進行させる原因にもなるといわれています。
つまり、人と会わない生活は、体の中に見えない炎症の火種を灯し続けてしまうのです。
交流がもたらす免疫の回復

人と関わることが免疫を高めるという研究も豊富にあります。
ウィスコンシン大学の実験(Cohen, 2015)では、社会的につながりが多い人ほど風邪ウイルスを投与されても発症しにくいことが確認されました。
これは単に感染を避けたわけではなく、免疫システムが実際に強く働いていたことを意味します。
ピッツバーグ大学の研究(Pressman, 2006)では、よく笑い、会話の多い人ほど唾液中の免疫グロブリンA(IgA)が高く、呼吸器感染への抵抗力が高いことが示されました。
笑いや会話が免疫を押し上げているのです。
孤立が病気を進める

社会的孤立は、感染症だけでなく、がんや慢性疾患の進行にも関係してきます。
オハイオ州立大学の追跡調査(Lutgendorf, 2012)では、社会的支援の少ない、がん患者はNK細胞の活性が低く、腫瘍の進行が早い傾向があると報告されました。
また、フィンランドの全国調査(Pantell, 2013)でも、孤立した人は心血管疾患や総死亡率が明らかに高いことが示されています。
つまり、人との関係が少ないことは、体の治る力や守る力を奪ってしまうのです。
子どもと免疫発達

免疫への影響は大人だけではなく、子どもの場合、人との関わりが少ないと、免疫の発達が十分に進まないことがわかっています。
ドイツの研究(Matthes, 2016)では、兄弟姉妹が少なく、交流の少ない子どもほどアレルギーや喘息の発症率が高いことが報告されました。
衛生仮説と呼ばれるこの現象は、適度な社会的刺激や微生物との接触が免疫の訓練になることを示しています。
孤立が生活リズムの乱れを呼ぶ

人と会わない生活は、心だけでなく行動習慣にも影響してきます。
会話が減ると活動量が下がって、運動不足や睡眠の乱れが起こります。
運動不足は免疫を活性化させる筋肉由来のホルモンである、マイオカインを減少させて、睡眠不足は免疫細胞の再生を妨げ、感染に弱くします。
さらに、孤独やストレスは腸内細菌のバランスにも影響して、免疫を支える腸の働きを乱すことがわかっています(Bastiaanssen, 2020)。
結論として

孤独は、心の問題だけでなく、免疫の低下という生理的な変化を引き起こします。
人との会話や笑い、ふれあいは、免疫のバランスを整え、体を守る見えない治療薬ともいえるのです。
コロナ禍で多くの人が孤立を経験しましたが、その影響が健康面にも及んでいることは明らかでした。
今後の健康づくりでは、運動や栄養だけでなく、人と会い、話し、つながることを免疫を育てる生活習慣として捉えることが重要だと考えています。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Irwin MR, et al. Loneliness, inflammation, and antiviral gene expression in humans. PNAS. 2016.
- Hawkley LC, et al. Loneliness and blood pressure. J Pers Soc Psychol. 2008.
- Cohen S, et al. Social relationships and susceptibility to the common cold. Psychol Sci. 2015.
- Pressman SD, et al. Positive affect and salivary IgA. Emotion. 2006.
- Lutgendorf SK, et al. Social support and immune function in cancer patients. Cancer. 2012.
- Pantell M, et al. Social isolation and mortality risk. Am J Public Health. 2013.
- Matthes J, et al. Early social environment and allergic disease risk. Allergy. 2016.
- Bastiaanssen TFS, et al. Social relationships, gut microbiota, and health. Brain Behav Immun. 2020.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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