重度の歯周病になると太る?痩せる?
2026年9月15日

結論をいいます
重度の歯周病になると、太りやすく、同時に痩せやすくもなります
この回答は、矛盾しているように聞こえるのですが、事実なのです。
歯ぐきの強い炎症は、ホルモンや筋肉、脂肪、腸内環境にまで波及して、体のエネルギー配分そのものを乱すのです。
その結果として、脂肪はつきやすいのに筋肉は落ちやすい、いわゆる“サルコペニック肥満”に傾く人がいれば、逆に慢性的な消耗で体重が減っていく人もいるのです。
鍵を握るのは、炎症の強さと続く期間、生活習慣、年齢、そして腸内環境なのです。
口の炎症が体重まで動かす理由

歯周病は口だけの病気ではありません。
細菌の刺激で続く炎症が血液に乗って、IL-6やTNF-αといった炎症性の物質を全身へ運ぶのです。
これが代謝の中枢に干渉して、食べたエネルギーの使う、貯める、修復する、というバランスを狂わせるのです。
東京医科歯科大とハーバードの共同研究は、重度歯周病の人ほど筋肉量が低く体脂肪率が高い傾向を示しました。
つまり歯周病は炎症性の代謝疾患でもあるのです。
炎症が壊す、代謝スイッチ

インスリンやレプチンなどのホルモンは通常、血糖を筋肉で燃やして、余ったら脂肪に回します。
ところが歯周病由来の炎症が続くと、インスリンが効きにくい体に傾いてしまい、糖が使われずに脂肪へ流れやすくなるのです。
一方で筋肉にはエネルギーが届きにくく、萎みやすくなります。臨床研究でも、重度歯周病群はインスリン抵抗性が約1.7倍高かったというデータもあります。
代謝がうまくいかずに、食べていないのに太る、動いているのに筋肉が減るということが同時に起こるのです。
炎症性肥満という落とし穴

カロリー過多だけでは説明できない肥満があります。
慢性炎症が脂肪組織に火を点けて、脂肪だけが増えて肥満を招くタイプです。
20年追跡の疫学研究では、歯周病が重い人ほど将来の肥満リスクが約1.6倍高かったと示されています。
脂肪は増えるのに筋肉は増えないという、生活習慣病の土台が静かに出来上がるわけです。
それでも痩せる人がいるのはなぜ?

炎症は、燃える現象です。体は火消しにエネルギーを使い続け、基礎代謝が上がります。
加えて、痛みや咀嚼トラブルでタンパク質摂取が落ちると、筋肉が削られて体重が落ちやすくなります。
高齢者ではこの傾向が顕著で、重度歯周病の約3分の1が低体重だったという報告もあるのです。
太る人と痩せる人、その分かれ目

同じ歯周病でも行き先が違う理由は大きく三つあります。
まずは、炎症の広がりと時間です。
全身炎症が長引けば太る炎症に、局所の痛みと摂食低下が強ければ痩せる炎症に傾くのです。
次に生活習慣とストレスです。
睡眠不足や喫煙、慢性ストレスはコルチゾールを上げ、脂肪をためこみやすくなります。
最後に年齢とホルモンです。若年は脂肪蓄積に、高齢は筋肉喪失に敏感になります。
事実として、高齢者で歯周病が進む群は1年後の筋肉減少リスクが約2.4倍に上がっていたというデータがあります。
口から腸へ、太る炎症と痩せる炎症を分けるスイッチ

歯周病菌が腸に届くと、腸のバリアが傷み、エネルギー吸収が増えて太りやすくなります。
その一方、重度では吸収不良となり痩せやすくなります。
口と腸は一本の管でつながっており、炎症は口から腸から全身へと連鎖するのです。
治療で代謝は回復。炎症から再生へ

歯周治療を集中的に行うと、インスリン抵抗性が改善して、筋肉が増え、体脂肪が減ることが複数の臨床研究で示されています。
体は炎症モードから再生モードへ切り替わり、体重は適正に近づくのです。
歯ぐきを治すことは、見た目以上に代謝の修復となりえるのです。
まとめとして、
炎症が止まれば、体は正しく、食べて・燃やして・貯める

重度の歯周病がもたらすのは、単なる体重増減ではありません。
脂肪は増えるのに筋肉は減るという最悪の組み合わせ、あるいは慢性的な消耗による体重減少。
その分岐は、炎症の大きさ・長さ、生活習慣、年齢、腸内環境で決まるのです。
そのため、歯周治療と生活改善、例えば、睡眠・栄養・禁煙・ストレスケアをセットで行えば、代謝は再び整い、体重は落ち着きを取り戻すのです。
歯ぐきを治すことは、あなたの代謝を救うことにつながります。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Yamazaki, K. et al. (2021). J Clin Periodontol, 48(9), 1220–1229.
- D’Aiuto, F. et al. (2020). Diabetes Care, 43(11), 2730–2737.
- Söder, P. Ö. et al. (2018). J Periodontol, 89(5), 555–563.
- Sheiham, A. et al. (2019). BMJ Open, 9(3), e026479.
- Furuta, M. et al. (2020). Geriatr Gerontol Int, 20(8), 755–763.
- Kitamoto, S. et al. (2020). Science, 369(6501), 1246–1253.
- D’Aiuto, F. et al. (2022). J Clin Endocrinol Metab, 107(4), 1159–1169.
- WHO. (2022). Global Oral Health Status Report.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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