歯磨き粉に重金属は含まれるのか?
2026年7月21日
最新の科学と報道から見える、本当の安全性
結論をいいます。
多くの歯磨き粉から微量の金属は検出されているが、通常使用での健康リスクは極めて低い。
現在までの国内外の研究を総合すると、歯磨き粉に重金属が検出されることはある、というのは事実です。
しかし、その大部分は極めて微量であり、人体への有害性が確認されている濃度には達していないといわれています。
つまり、ゼロではないが、問題になるレベルではないというのが現時点での科学的な結論となります。
ただし、すべての製品が安全であるとは限りません。
製造国や品質管理の水準によっては、鉛(Pb)・カドミウム(Cd)・ニッケル(Ni)・ヒ素(As)などが基準値を超えて検出された報告もあり、特に安価な輸入製品や模倣品は注意が必要と思われます。
一方で、大手メーカーや日本国内の正規流通品に関しては、国際安全基準に準拠しており、通常使用による健康リスクはほぼないと考えられています。
ただ、断定はできません。
歯磨き粉に金属が含まれる理由

なぜ歯磨き粉から重金属が検出されるのでしょうか。
それは意図的に入れられているわけではなく、主に以下のような理由で微量に混入するのです。
歯磨き粉には、研磨剤、防腐剤、着色剤、抗菌成分など、さまざまな無機化合物が使われています。
例えば、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、シリカなどの研磨剤には、原料の鉱石由来で微量の鉛やニッケルが含まれることがあるのです。
また、酸化チタン(TiO₂)は白色の着色剤として用いられ、これは金属チタン由来の化合物なのです。
亜鉛化合物(ZnCl₂、Zn-citrate)は口臭抑制や抗菌目的で配合され、スズ(Sn)や銅(Cu)なども抗菌性を高めるためにごく微量使われる場合があります。
つまり、重金属=毒という話ではなく、金属元素を含む化合物が歯磨き粉の機能に利用されているというのが正確な理解であると考えています。
大切なのは、その金属がどの種類で、どの程度の量が含まれているかという点にあります。
科学的研究が示す、検出の事実

世界各国の大学や研究機関では、歯磨き粉の重金属含有量を調査する研究が複数行われており、代表的な研究を紹介していきます。
1.Frontiers in Dental Medicine(2025年)
カナダ・マクギル大学を中心とした研究チームが、世界中の歯磨き粉に関する研究を体系的にレビューしました。
その結果、対象となったすべての調査で、少なくとも1種類以上の金属元素が検出された、と報告されています。
検出された金属には、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ヒ素(As)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)などがあり、製品ごとに濃度差が大きいことが指摘されました(Chengappa et al., Frontiers in Dental Medicine, 2025)。
ただし、これらの多くは、許容濃度未満であり、健康被害が発生するレベルではないとされています。
論文の結論でも、金属の存在は検出されるが、リスク評価を伴わない単純な検出報告は誤解を招きやすい、と記されています。
2.マルタ大学(2019年)
マルタ大学薬学部のVella & Attardらは、地元薬局で販売されている歯磨き粉9製品を分析しました。
その結果、水銀(Hg)やカドミウム(Cd)はすべての製品で検出されず、鉛とニッケルが一部でごく微量に検出されました。
また、抗菌作用を持つ亜鉛(Zn)やスズ(Sn)は比較的高い値で検出されましたが、これは意図的配合によるものとされました。
結論として、通常使用範囲では安全性に問題なし、と報告されています(Vella & Attard, Cosmetics, 2019)。
3.イラクの基礎研究(2024年)
イラク国内で販売される複数の歯磨き粉をAAS(原子吸光分析)およびLIBS(レーザー誘起分光法)で分析した研究では、鉛(Pb)・カドミウム(Cd)・水銀(Hg)が0.3〜0.5ppmの範囲で検出されました(Nader et al., Journal of Optics, 2024)。
この値は、世界保健機関(WHO)が定める安全基準(1ppm未満)を下回っていました。
4.パキスタン・ラホール市場調査(2021年)
ラホール大学が行った研究では、地元および輸入歯磨き粉の中から、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)などが検出されました。
ただし、いずれも人体への慢性的影響を与えるレベルではなく、鉛(Pb)は検出限界以下であったと報告されています(Khan et al., Int. Res. J. Env. Sci., 2021)。
P&Gの歯磨き粉と鉛検出

2025年4月、英紙『ガーディアン』が、消費者団体 Lead Safe Mama による調査結果を報じました。
51銘柄の歯磨き粉を対象とした検査で、約90%の製品から鉛が検出されたというものです。
報道によれば、対象製品の中にはP&G社の「Crest」など主要ブランドも含まれていたとされます(The Guardian, 2025)。
ただし、この調査は査読付き論文ではなく、市民団体による独自測定の域を出ていません。
また、分析手法や定量値、基準値との比較が十分に示されておらず、科学的評価としては限定的といわれています。
P&Gは公式声明で、当社の製品はFDAおよびEUの安全基準を遵守しており、重金属を意図的に添加していない、と明言しています(P&G公式サイト, 2025)。
したがって、現時点で、P&G製歯磨き粉に危険な量の鉛が含まれている、と断定できる科学的根拠は存在しません。
とはいえ、こうした報道が企業の透明性と安全管理を高める契機になることは確かです。
健康への影響と曝露評価

Public Health Toxicology誌(2025年)では、歯磨き粉に含まれる鉛・ヒ素・水銀・カドミウムの濃度をもとに、成人と小児の曝露量(ADD:平均一日摂取量)を推定しました。
結果として、ほとんどの製品では安全限界を下回るものの、小児が過剰に歯磨き粉を飲み込んだ場合、鉛曝露量がWHO基準をわずかに超える可能性が示されました(Massarsky et al., Public Health Toxicology, 2025)。
つまり、通常の使用方法を守っていれば問題はありませんが、誤って飲み込むことが続くと影響を受ける恐れがあるということです。
特に小児用歯磨き粉では、低濃度フッ素・低刺激成分を選び、使用量を米粒大に抑えることが推奨されています。
国際規制と今後の課題

WHOや欧州連合(EU)、日本の厚生労働省はいずれも、化粧品・オーラルケア製品中の鉛・カドミウム・水銀・ヒ素の濃度制限を定めています。
EUでは鉛の最大許容濃度は1ppm以下、日本の化粧品基準では鉛・カドミウム・ヒ素いずれも数ppm以下が目安です。
これを超える製品は流通が禁止されています。
したがって、日本国内で販売されている大手メーカー製品において、これら有害金属が問題となるレベルで含まれている可能性は極めて低いと考えられます。
ただ、断定はできません。
一方で、海外のオンラインショップや模倣品、成分表記が不明確な製品には注意が必要です。
国際市場での規制格差が、こうしたリスクを生み出す温床になっていると思われます。
科学と社会のあいだで

歯磨き粉に重金属が含まれている、と聞くと不安を感じますが、科学的事実を見れば、危険視する必要はほとんどないと考えられます。
実際に重金属はごく微量に存在し、ほとんどの製品では安全基準を大きく下回ります。
それでも問題が話題になるのは、私たちが日常的に体に取り入れるものだからです。
科学はゼロリスクを保証するものではなく、安全域内に管理することを目的としていますから、その意味で、今回の一連の研究・報道は、製品の安全性を確認する機会として意義があると考えています。
まとめとして

歯磨き粉には、金属由来の成分が含まれている場合があります。
それは意図的に添加してものであったり、製造過程での微量混入であったりしますが、いずれも通常使用では健康被害を及ぼすレベルではありません。
国内外の多くの研究は、検出=危険ではなく、検出=成分管理の指標として扱うべきだと示しています。
したがって、正規品を正しい方法で使う限り、歯磨き粉による重金属の健康リスクは限りなく低いといえます。
大切なのは、不確かな噂やSNSの情報に振り回されず、科学的根拠に基づいて判断する姿勢が大切だ普通ならいいたいのですが、中長期的に安全と判断できるものかどうかは、正直わからないと、私は考えています。
有名メーカーだから、大丈夫という判断ではなく、少なくとも、気になる成分が入っているものは使用しないことが、精神的にも安心ではないかと思います。
みなさんにとって、正しい、安心できる選択をしてください。
毎回使うものですから。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Chengappa K. et al. Heavy metal content of over-the-counter toothpastes—a systematic review of in vitro studies. Frontiers in Dental Medicine, 2025.
- Vella A., Attard E. Analysis of Heavy Metal Content in Conventional and Herbal Toothpastes Available at Maltese Pharmacies. Cosmetics, 2019.
- Nader R., Mohamad H.J., Zoory M.J. Comparison of Heavy Metals Concentrations in Toothpaste Using AAS and LIBS. Journal of Optics, 2024.
- Massarsky A., Unice K.M., Kreider M.L. Health risk implications of heavy metals in toothpaste. Public Health Toxicology, 2025.
- Khan N., Fatima N., Kabeer M.S. Assessment of toothpaste from local and imported origins for its heavy metals and minerals composition. International Research Journal of Environmental Science, 2021.
- The Guardian. “Tests find lead and heavy metals in 90% of toothpastes.” April 2025.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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