ホワイトニングは本当に安全なのか?
2026年1月27日
結論から申しますと、ホワイトニングは、正しく行えば安全だが、すべての人に無害ではない
ホワイトニングを受けたあとに、歯が白くなって嬉しい、自信がついた、笑顔が変わった、と感じる方は多いと思います。
ホワイトニングは歯を削らずに美しくできる方法ですが、知覚過敏が止まらない、歯が痛い、艶がなくなった、と感じる人もいます。
ホワイトニングは正しく行えば安全といわれています。
ただし、それは健康な歯質、適切なホワイトニング剤の濃度、ホワイトニングの正しい施術頻度、という条件の上で成り立つ安全であることを忘れてはなりません。
人によってはリスクが高まることもありますから、安全な施術ではなく安全に行う必要がある施術と考えるべきなのです。
歯が白くなる本当の仕組み
ホワイトニング剤の主成分は、過酸化水素や過酸化尿素なります。
これらは酸素を発生させる特徴があり、歯の中に入り込んだステインと言う色素を化学的に分解して無色化するのです。
ちなみに、この作用によって歯が明るく見えるようになるのですが、エナメル質を削ったり、歯そのものを溶かしたりしているわけではありません。
2020年のアメリカ歯科医師会(ADA)の報告では、適正濃度、適正時間を守ったホワイトニングは、歯質を損なうことなく安全に行えると示しています(ADA, 2020)。
しかし、同じホワイトニング濃度でも、人によって歯の反応やダメージの出方はまったく異なりますから、キチンと条件を遵守する必要があります。
しみる、痛いという症状
ホワイトニングの後、多くの人が経験するしみる感覚は、ホワイトニング薬剤がエナメル質を通過して、象牙質の中にある象牙細管という極めて細い管を通って、神経を刺激するために起こります。
通常、この症状は一時的なもので、数日以内に治まりますが、1週間以上続く人もいます。
2019年のキングス・カレッジ・ロンドンの研究(Bartlett D, 2019)によると、ホワイトニング後に約4割が一時的な知覚過敏を経験しており、その多くは48時間以内に改善しましたが、数パーセントの人では1週間以上続いたと報告されているのです。
つまり、条件を守っても、すべての人が同じように回復するわけではないということが大切なのです。
体質や人種で違う反応
個人差と人種差を考える必要があります。
歯の構造は身長差があるのと同様に、人によって異なります。例えば、エナメル質の厚さや象牙質の透過性、唾液の性質も違うのです。
人種別だと、アジア人は欧米人よりもエナメル質が薄く、歯がやや黄色味を帯びて見える傾向があり、同じ濃度のホワイトニングの薬剤を使用しても、刺激を受けやすく痛みが出やすい特徴があります。
2021年のブラジル・ポルトアレグレ大学の研究(Demarco FF, 2021)では、人種によってホワイトニング薬剤の反応速度とエナメル質への影響に差があることが示されました。
2018年のハーバード大学の研究(Dawes C, 2018)では、唾液分泌量が少ない人では再石灰化が遅れやすく、知覚過敏が長期化する傾向があると報告しています。
つまり、メーカー推奨どおりに行っているから、絶対安全、という考えは、科学的にみると危険であることがわかると思います。
エッチングのリスク
一部のホワイトニングマニュアルや講習では、色が変わりにくい歯には酸で表面を処理して薬剤の浸透を促してからホワイトニングをするように説明されています。
これはエッチングと呼ばれ、リン酸などの酸でエナメル質を軽く脱灰させる処置です。
確かに白くなりやすくはなるのですが、
この工程は、エナメル質が微細に傷つき、表面が荒れてしまうリスクがあります。
2020年のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究(Joiner A., J Dent, 2020)では、リン酸などの酸処理を3回以上繰り返すと、エナメル質の硬度が平均6〜8%低下したと報告されています。
また、再石灰化が不十分な状態でホワイトニングの薬剤を塗布すると、マイクロクラックという微細なヒビが発生する可能性も指摘されているのです。
2021年の日本歯科保存学会のホワイトニングガイドライン(2021)では、酸処理は慎重な適応と再石灰化処置を前提とすべきであり、通常症例での併用は推奨されない、とリスクについて明記されています。
つまり、即効性を求めて酸を使うと、リスクが高くなるといえるのです。
メーカーの安全データは信頼できるか?
ホワイトニング剤のメーカーが公表している臨床試験の多くは、数十〜数百人規模、期間は数週間〜数か月という短期的なものになります。
被験者の大半は健康な若者であり、高齢者、歯周病患者、唾液分泌が少ない人などは除外されているのです。
つまり、何が言いたいかと言うと、これらの研究結果は、健康な歯を持つ平均的な人における安全性をただ示しているだけで、現実の臨床現場での多様な患者すべてをカバーしているリスクについては未知数であるということなのです。
メーカー推奨どおりなら安全という考えは、あくまで条件付きの安全という前提が隠れていることを決して忘れてはなりません。
口の中への影響
ホワイトニングに使われる過酸化水素は、強い酸化力を持つ物質です。
そのため、歯だけでなく、口の中の細菌バランスにも一時的な影響を与えます。
2021年のスウェーデンのカロリンスカ研究所(Larsen T, 2021)の報告では、高濃度の過酸化水素を複数回使用した場合、一部の善玉菌が減少して、歯肉の炎症リスクが一時的に上昇するケースが確認されています。
多くは数日で自然に戻るのですが、歯周病を抱える人では注意が必要と考えています。
つまり、ホワイトニングは歯だけの問題でなく、口腔全体のバランスにも影響を及ぼす可能性があることを知る必要があるのです。
現場で実際に起きていること
実際の診療では、メーカー推奨どおりに行っても、強い知覚過敏が出たり、艶が落ちたりする人が一定数存在します。
歯ぎしりや食いしばりで歯が薄くなっている方、ホルモン変化で唾液が減っている女性、ストレスで自律神経が乱れて、感覚が敏感な方。
こうした患者では、通常より強い刺激が出やすく、回復にも思ったよりも時間がかかるのです。
安全性とは、ホワイトニングの薬剤の性質だけで決まるものではありません。
歯と身体の状態、生活習慣、免疫、体質によっても、安全性は変化するものなのです。
この事実を知ってから、当法人ではホワイトニング施術を廃止しています。
再開を希望される多くの方から、惜しまれる声をいただいたのですが、患者さんのためにしているのに、もしかしたら患者さんのためにならない可能性があるものは、私としてはできなかったのです。
安全に行うために
本当に安全なホワイトニングは、歯を白くする技術のことではなく、歯を守りながら白くするための準備がもっとも大切なのです。
具体的には、施術の前に歯や歯ぐきの健康状態を確認します。
虫歯、歯周病、咬耗、知覚過敏の有無をチェック。
施術後には再石灰化を促すためのフッ素塗布やカルシウムゲルを使用して、十分な間隔を空けてから再施術を行うこと。
日常生活でも、酸性飲料や着色物を控えて、口腔内の潤いを保つように努めること。
こうした一連の流れを守って初めて、ホワイトニングは安全と言えるわけです。
結論として、ホワイトニングは安全ではなく、安全に扱うべき医療行為であるということ
ホワイトニングは適切な管理のもとで行えば、歯を傷めずに白く美しくできる可能性のある施術です。
しかし、それは条件を満たした場合に限られるということです。
歯の厚み、唾液量、年齢、ストレス、ホルモンバランス、実は、すべて個人差があります。
AIやメーカーのデータが示す平均的な安全性の裏には、臨床の現場で実際に苦しんでいる人たちの声が存在するのです。
本質的なホワイトニングのリスクとは、ホワイトニングの薬剤ではなく、その施術を受ける個人差を無視することだと考えています。
ただ、クリニックのある場所が良いからとかでクリニックを選ぶのではなく、ホワイトニングについて十分な見識のある歯科医師としっかり相談しながら行う必要がある施術です。
このことにこだわることこそが、本当の意味で安全なホワイトニングになるのだと考えています。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考・引用文献
- American Dental Association. Tooth whitening/bleaching: Treatment considerations for dentists and their patients., 2020.
- Bartlett D. et al. Randomized clinical trials on whitening sensitivity. King’s College London, 2019.
- Joiner A. Review of the effects of peroxide on enamel and dentine properties. J Dent., 2020.
- Demarco FF. Effects of bleaching on dental hard tissues and restorations. Dent Mater., 2021.
- Dawes C. et al. Role of saliva in enamel remineralization and sensitivity. Harvard School of Dental Medicine, 2018.
- Larsen T. Hydrogen peroxide and oral microbiome alteration. Karolinska Institutet, 2021.
- 日本歯科保存学会『歯のホワイトニングガイドライン』, 2021年版


