歯周病になりやすい職業ランキング
2026年2月27日
歯周病は、虫歯のように痛みで気づく病気ではなく、静かに、確実に進行する沈黙の感染症といえます。
日本歯周病学会の調査では、成人の約7割が何らかの歯周疾患を抱えているとしています。つまり、国民病ともいえるのです。
ところが、近年、どんな仕事をしているかが歯周病の発症や進行と深く関わることが明らかになってきています。
生活リズム、ストレス、睡眠、免疫、血流、それらすべてを左右することが、働き方にあります。
つまり、職業によって歯ぐきの健康寿命が決まるといえなくもないのです。
ここでは最新の研究をもとに、歯周病になりやすい職業をランキング形式で紹介しながら、働き方と炎症の深い関係を解説していきます。
第1位:長距離ドライバー 、動かない仕事
最もリスクが高いのは、座りっぱなしの仕事です。
代表的なものとして長距離ドライバーは、歯周病の発症率が事務職の約2倍に達するといわれています(Nakayama et al., 2016)。
長時間同じ姿勢で運転していると、下あごや顔の血流が滞って、歯肉への酸素供給が不足すしていきます。さらに、水分を控えることで口が乾いて、唾液の防御力が低下するのです。
加えて、夜間の運転、睡眠不足、喫煙、缶コーヒーなどの複数よ連鎖が、炎症を飛躍的に加速させていきます。
トルコの研究(Yildiz et al., 2019)でも、1日10時間以上の勤務が歯周ポケット形成を強く促すことが示されています。
つまり、動かない仕事と口の中が乾く環境が、最も危険な組み合わせになるのです。
第2位:夜勤・交代勤務者
夜勤や交代勤務者は、歯周病のハイリスクの職業といえます。
夜間の勤務では、メラトニンという、炎症を抑えるホルモンが減少して、免疫が不安定になります。
看護師を対象とした研究(Tani et al., 2018)では、夜勤回数が多いほど歯肉出血や歯周ポケットが深くなる傾向が確認されています。
夜勤によるメラトニン欠乏はサイトカイン(炎症物質)の過剰分泌を招いて、止まらない炎症”を作り出すのです(Gomez et al., 2020)。
食事や睡眠のリズムが崩れて、コルチゾール(ストレスホルモン)が慢性的に高まることで、さらに、歯ぐきの回復力は著しく落ちていきます。
働く時間帯が変わるだけで、身体の免疫時計までも狂うことになるのです。
第3位:管理職・ITエンジニア
一見安全に見えるデスクワークでも、長時間の座位、締め切り、責任、これらが慢性的ストレスを引き起こして、歯ぐきをじわじわとむしばんでいくことがあります。
ストレスホルモンのコルチゾールは免疫細胞の働きを鈍らせて、歯肉の炎症を悪化させていきます。
BMJ Open(2019)のメタ分析では、仕事のストレスを抱える人は歯周病リスクが約1.4倍高いと報告されています。
さらに、集中時の口呼吸や食いしばりが歯周組織を圧迫していき、血流低下や乾燥も加わることで、慢性炎症が進行していくのです。
心の緊張が歯ぐきのダメージに変わる、それがオフィスワーカーの現実となります。
第4位:飲食業
厨房で働く人々の口腔環境は、見た目以上に過酷です。
高温多湿で水分が奪われて、唾液が減りやすい状態が慢性化します。唾液は細菌を抑える天然の防御液であり、これが不足すれば炎症は一気に進むのです。
料理人を対象とした研究(Yoshida et al., 2018)では、味見回数が多い人ほどプラークと歯肉出血のスコアが高かったと示されています。
それは、糖や酸を口に入れる回数が増えるほど、歯周病菌の活性も上がるからおきるのです。
接客業では勤務中に水を飲みにくい環境も多く、笑顔で口を開ける時間が長いことも乾燥を助長します。
炎症は乾燥から始まるのです。
第5位:建設・製造業
屋外作業や工場勤務では、粉じんや金属微粒子を吸い込みやすく、これらの微細な異物が歯ぐきに沈着すると、慢性的な刺激の源となります。
韓国の研究(Kim et al., 2020)によると、粉じん曝露者は非曝露者に比べて歯周ポケット形成リスクが1.6倍高かった。
また、振動工具の使用は末梢血流を悪化させ、歯肉の修復を遅らせるのです。
喫煙率が高い職種でもあり、ニコチンによって血管が収縮し、炎症の自覚症状を感じにくくなり、気づかぬうちに骨が溶けることが多いのが、この職業の典型的な特徴となります。
第6位:教育・介護・保育職
人を支える仕事をしている人ほど、自分の健康を後回しにしがちになります。
昼休みも短く、歯みがきをする余裕がない。実際、保育士で勤務中に歯を磨ける人はわずか38%というデータもあります(Hirano et al., 2021)。
さらに、声を出す仕事では口呼吸が増えて、乾燥が慢性化していきます。さらに唾液が減ることで、歯周病菌が増殖しやすくなるのです。
また、ストレスや過労が続くと副腎皮質ホルモンが増えて、炎症を抑える力が低下するのです。
人のために尽くすことが、自分の歯ぐきを犠牲にすることにつながる、という少し心が痛む職種でもあります。
第7位:デスクワーカー
空調の効いたオフィスで一日中座りっぱなしで、他の人と話す機会が少ないと、唾液の循環が減って口の中が乾いてきます。乾燥は細菌を活発にし、口臭や歯肉炎の原因となります。
また、無意識の食いしばりによって歯ぐきに圧力がかかると、軽度の炎症でも骨吸収が進みやすくなるのです。
冷暖房の風、口呼吸、長時間の集中などが積み重なって、炎症状態が静かに進んでいくのです。
最後に
歯周病は生活習慣病であると同時に、職業病でもあります。
長時間労働、ストレス、乾燥、睡眠不足、喫煙、それらはすべて職場が生み出す炎症の温床となります。
欧州歯周病学連盟(EFP, 2021)は、職場における炎症負荷の軽減を次世代の予防歯科の柱と位置づけています。
つまり、企業が従業員の歯科健診やストレス対策を導入することは、生産性と健康寿命を同時に守る必要な投資となるのです。
歯ぐきの炎症は静かに進む。だが、その影響は全身に広がっていきます。
心臓、脳、血糖、免疫、これらはどれも歯周病と深くつながっているのです。
歯を守ることは、体を守ることに繋がります。
その第一歩は、仕事の合間の一杯の水、そして一日一度の丁寧な歯みがきから始まるのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Nakayama, K. et al. (2016). Industrial Health, 54(6), 519–526.
- Yildiz, H. et al. (2019). Clinical Oral Investigations, 23(8), 3143–3150.
- Tani, M. et al. (2018). Journal of Occupational Health, 60(5), 411–418.
- Gomez, F. et al. (2020). Journal of Periodontology, 91(10), 1245–1254.
- Kim, D. et al. (2020). Int Arch Occup Environ Health, 93(7), 829–838.
- Hirano, A. et al. (2021). Bull Tokyo Dent Coll, 62(2), 89–97.
- Yoshida, M. et al. (2018). Journal of Oral Science, 60(4), 529–536.
- European Federation of Periodontology (EFP). (2021). Workplace and Periodontal Health: Consensus Statement.


