あなたの奥歯、保険の白い詰め物で大丈夫?
2026年3月27日
結論をいいます
奥歯につめるレジンの詰め物は長持ちはしにくい
見た目が自然で、銀歯は避けたい、そう思う人にとって、保険でできる白い詰め物(コンポジットレジン修復)は非常に魅力的にみえると思います。
しかし、大学病院の長期研究をたどると、この材料には明確な限界があることが見えてきます。
前歯や小さな虫歯では非常に優れた結果を示す一方で、奥歯の噛む面に広く使った場合は、数年で劣化、やり直しが必要になるケースが多いのです。
これが多くの研究が示す共通の結論となります。
つまり、保険のレジンは綺麗で、短期的にはいいのですが、長期的に強い力に耐えられる材料ではないのです。
奥歯では、噛む力が寿命を縮める
長崎大学病院が行った11年間の追跡調査(Kuboら, Dental Materials Journal, 2010)では、97名の患者を対象に、保険でできる白いレジン修復の経過を詳しく記録しました。
修復の寿命は、歯の部位と範囲、患者の年齢、そして噛む力に大きく左右されるていたのです。
特に、奥歯の噛む面である、最も強い力が加わる部分に広く詰めたレジンは、辺縁部の欠けや変色、詰め物の下で再び虫歯になる)2次う蝕が起きやすく、5年を超えるとトラブルが増える傾向が確認されました。
見た目には白く美しく仕上がっても、毎日の食事での咀嚼のたびに少しずつ摩耗していくのです。
これは、レジンという素材の限界なのです。
多施設共同研究が示す、技術の差
一方で、国内9つの大学病院が共同で行った研究(Hosakaら, Dental Materials Journal, 2021)では、352件のレジン修復を3年間追跡しました。
この研究では、3年経過した時点のレジン生存率は非常に高く、ほとんどの詰め物が良好に機能していたと報告されています。
ただし、“ワンステップ接着”という簡易的な方法では、辺縁の着色や摩耗が多く、“ツーステップ接着”の方が安定していたのです。
つまり、材料そのものの問題よりも、術者の丁寧さ、と接着法の選択が寿命を決める。
大学病院のデータは、そのように示しました。
環境が整った施設では長持ちしますが、日常の臨床現場では、技術の差が結果を左右する現実もあるのだと思います。
30年を超える追跡研究
それでも長く持ったケースはあるのか?という疑問に答えてくれるのが、ブラジルの大学病院で行われた最大33年に及ぶ長期追跡研究です(Da Rosa Rodolphoら, Dental Materials, 2022)。
奥歯に入れたレジン修復の年間失敗率はわずか1〜2%。中には20年以上トラブルなく使えた症例もありました。
とはいえ、これは定期的なメンテナンスを欠かさず、破損部を小まめに補修して延命した結果なのです。
そのため、なにもしないで33年放置したのではなく、少しでも欠けたところは修理するという、手をかけ続けることで長持ちさせているのが現実です。
長寿命を期待するなら、丁寧な治療と継続的ケアが必要であるのです。
経験が結果を左右する
ブラジルの別の研究(Alonsoら, Clinical Oral Investigations, 2024)では、歯学部の学生が行ったレジン修復の経過を12年間追跡しました。
その結果、12年時点での生存率は約78%、年間失敗率は2%でした。
プロの歯科医師よりやや劣るとはいえ、学生の施術でもここまで維持できたことは、レジンの性能の高さを示す重要なデータとなります。
環境ホルモン
レジン材料を語るうえで避けて通れないのが、ビスフェノールA(BPA)の問題です。
BPAは環境ホルモンの一種で、動物実験では発達やホルモンへの影響が指摘されています。
ただし、実際のレジンにBPAそのものが多く含まれているわけではなく、Bis-GMAなどのBPA由来の樹脂が使われています。これが硬化の際に微量に溶け出す可能性があるといわれています。
アメリカ歯科医師会(ADA)は、レジンから検出されるBPAは極めて微量で、健康への有害性を示す科学的証拠はないと明言しています(Fungら, JADA, 2000)。
国内の小児歯科学研究でも、治療直後に一過性のBPAが唾液から検出されるものの、数時間で検出限界以下になると報告されています(松村ら, 小児歯科学雑誌, 2015)。
それでも妊婦や子どもなど感受性の高い患者では、BPAフリー材料があるのであれば、そちらを選んだり、光照射を十分に行うなどの配慮が推奨されています(EFSA, 2015)。
つまり、BPAのリスクはほとんど心配ないが、ゼロではないというのが、科学的な立ち位置となります。
現実的な結論
これまでの大学病院・国際研究を総合すると、レジン詰め物の実像はこうなります。
奥歯のレジン修復は、短期的には十分信頼できるが、長期的には摩耗、変色、再治療のリスクが避けられない。
また、治療の丁寧さとメンテナンスの継続が寿命を大きく左右します。
そして、BPAの健康影響は現時点で問題視されていないということです。
長く安心して使いたいなら
保険のレジンは、審美性と経済性のバランスに優れた治療のひとつです。
もし、できるだけ長く安定させたい、やり直しを減らしたい、と考えるなら、セラミックやゴールドといった自費の修復材を選ぶのがいいと思いますし、それだけの価値があります。
セラミックは変色や摩耗に強く、見た目も自然です。
ゴールドは歯との適合性が極めて高く、噛み合わせに優れています。
初期費用は高くても、再治療の頻度を減らし、歯を長く守れるという意味では、長い目でみると、結果的に経済的な選択になると思います。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
引用文献
- Kubo S, et al. Dental Materials Journal, 2010.
- Hosaka K, et al. Dental Materials Journal, 2021.
- Da Rosa Rodolpho PA, et al. Dental Materials, 2022.
- Alonso ALL, et al. Clinical Oral Investigations, 2024.
- Fung EY, et al. J Am Dent Assoc., 2000.
- 松村ら. 小児歯科学雑誌, 2015.
- European Food Safety Authority (EFSA). EFSA Journal, 2015.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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