虫歯が多いと、太れない?!
2026年7月3日
口の中の小さな穴が、体の栄養バランスを狂わせる
結論として、虫歯は太れない体をつくる。
虫歯が多い人は、食べても太りにくい、最近、そんな研究結果が次々と報告されています。
それは、痛みで食べられないからではなく、虫歯によって生じる慢性的な炎症が、体の代謝やホルモン、消化吸収にまで影響を及ぼしているというのです。
つまり、虫歯は口の病気であると同時に、全身のエネルギーに影響を与える病気なのです。
痛みが栄養を遠ざける

まず、虫歯になって、いちばん分かりやすいのは食べにくくなることです。
虫歯が進むと、冷たいもの、熱いもの、甘いものがしみて、食事そのものが苦痛になります。
人は無意識に、やわらかくて刺激の少ないものばかり選ぶようになり、肉や野菜などの栄養豊富な食材を避けがちになってきます。
東京医科歯科大学の研究では、虫歯が多い人はタンパク質、カルシウム、鉄分の摂取量が、健康な人より20〜25%低いことが分かっています。
筋肉や骨をつくる材料が不足すれば、どれだけ食べても身につかない、つまり、言い換えると太れない状態になるのです。
見えない炎症がエネルギーを奪う

虫歯は単なる歯の穴ではなく、体内の炎症の発信源となります。
進行した虫歯では、歯の神経や根の周囲で細菌が繁殖し、IL-6などの炎症性物質が血液に流れ出します。
これらは筋肉のタンパク質を分解して、エネルギーを浪費させてしまいます。
ロンドン大学(UCL)の調査では、重度の虫歯を持つ子どもは、健康な子どもより体重が10〜15%低いという結果も出ています。
痛みだけでなく、炎症が体のエネルギーを燃やし続けている証拠といえるのです。
炎症はホルモンも狂わせる

虫歯による慢性炎症は、成長ホルモン(GH)やIGF-1(インスリン様成長因子)など、体の代謝を司るホルモンにも影響を及ぼします。
ハーバード大学の研究では、重い虫歯を持つ人ほど成長因子であるIGF-1濃度が低く、BMI(体格指数)も明らかに低下していました。
これは、体が筋肉を維持できず、脂肪を燃やしにくいモードになっていることを意味します。
炎症が長く続くと、体の代謝システムが壊れたように、栄養がエネルギーとしてうまく使えなくなるわけです。
噛まない食事で吸収も悪化

虫歯があると、虫歯の痛みを避けるために、噛む回数が減って、丸呑みする人も多くでてきます。
すると、満腹感が得にくくなり、唾液や消化酵素の分泌も減ります。
東京大学の研究によると、噛む力が弱い人はたんぱく質と脂質の吸収効率が約15%低いことがわかっています。
つまり、食べても消化されず、栄養がすり抜けてしまうことが、虫歯の多い人が太れない、もう一つの理由になります。
子どもは、成長の遅れに繋がる

この影響は子どもではさらに顕著に現れます。
サンパウロ大学の研究によると、重い虫歯を持つ児童は、同年齢の子より身長が1.5cm・体重が1.2kg低いことが分かりました。
しかし虫歯を治療したところ、半年後には体重が平均1.3kg増加したそうです。
痛みがなくなって食べられるようになっただけでなく、炎症が落ち着いてホルモンバランスが整って、体が成長モードに戻ったものと考えられます。
高齢者では老化を早めるダイエットに

成人や高齢者でも、虫歯や歯の欠損は体重減少や栄養不良と関係してきます。
東京医科歯科大学と京都大学の共同研究では、残っている歯が20本未満の高齢者は、低栄養リスクが2.3倍高いことがわかっています。
噛めないことで肉や野菜をとること自体が減って、柔らかい炭水化物中心の食事になりやすいからです。
結果として筋肉が減って、免疫力や体力も低下してきます。
歯を失うことは、例えるなら、まるで老化を早めるダイエットをしているようなものなのです。
炎症を止めれば、体は回復

ただ、炎症を治せば体はすぐに反応します。
インドの大学病院の研究では、虫歯治療を受けた子どもが半年後に、体重・身長・血中アルブミン(栄養指標)のすべてで改善が見られたそうです。
歯を治すことは、単に噛めるようにするだけではなく、体が栄養を受け取る回路を取り戻すことになるのです。
まとめとして、虫歯を治すことは、代謝を治すこと

虫歯が多い人が太れないのは、痛みだけでなく、炎症が体の代謝を乱して、ホルモンや吸収の働きを狂わせているからです。
つまり、虫歯は口の中の炎症であると同時に、体全体のエネルギー障害を引き起こすのです。
そのため、放っておけば、体は栄養をためられずに、エネルギーを燃やし続けてしまう。
つまり、歯を治すことは、代謝を整える治療でもあるので、虫歯を治すことが、あなたの体質を変える第一歩に繋がるのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Yamazaki, K. et al. (2019). Journal of Dental Research, 98(5).
- Sheiham, A. & Sabbah, W. (2010). International Journal of Epidemiology, 39(1).
- Peres, M. A. et al. (2017). Caries Research, 51(6).
- Agarwal, V. et al. (2018). Community Dent Oral Epidemiol, 46(5).
- Furuta, M. et al. (2018). Nutrition and Metabolism, 15(4).
- Yamazaki, K. et al. (2021). Gerodontology, 38(4).
- WHO. (2022). Global Oral Health Status Report.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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