物忘れの原因とは?
2026年3月18日
朝日新聞に掲載されましたが、紙面の都合上、文字数に制約があったため、内容を充実させたバージョンをお届けします
しっかり者で通っていた私ですが、最近、物忘れが増えました。という相談を受けました。
朝日新聞に掲載された記事は、この一文から始まりました。
限られた文字数の中で、どうしても伝えきれなかった思いがありますから、この記事では、その背景や、いま分かってきている医学的な知見を含め、あらためて、より丁寧にお伝えしたいと思います。
物忘れに気づいたときの、あの戸惑い
名前がすぐに出てこない。用事を思い出そうとして、少し時間がかかる。何を取りに来たのだったか?と立ち止まることが増えた。
以前の自分なら、考えられなかったことでしょう。
周囲からは今でも、しっかりしている、と言われます。
だからこそ、なおさら戸惑いがあったそうです。
年齢のせいだと頭では分かっている。
それでも、胸の奥に小さな不安が残るわけです。
このまま悪化して進んでいくのだろうか.。
そんな思いがよぎっても、恥ずかしさもあって、家族にはなかなか相談できなかったそうです。
朝日新聞の記事が大きな反響を呼んだことからも、同じような悩みを抱えている方が、実はとても多いことが分かりました。
年齢を重ねても、脳は反応する力を持っています。
これまで、物忘れや認知機能の低下は、年齢とともに避けられないものと考えられてきました。
しかし、近年、世界的に有名な大学や研究機関の研究によって、脳は年齢を重ねても、刺激によって働きを保つ力を持っていることが分かってきています。
ハーバード大学やスタンフォード大学の神経科学研究では、脳は使われなくなることで機能が低下しやすくなり、適切な刺激が与えられることで、神経活動や血流が保たれやすいことが示されています。
つまり、重要なのは年齢そのものではなく、脳が日常的にどのような刺激を受けているかが問題なのです。
噛むという動作が、脳に与える影響
ここで注目されているのが、噛むという行為なのです。
奥歯でしっかり噛むと、顎の筋肉や歯根を通じて、強い感覚刺激が脳に送られます。
近年の研究では、この刺激が、記憶に深く関わる脳の部位「海馬」の血流や神経活動と関連する可能性が示されています。
たとえば、東京大学や東北大学、カリフォルニア大学(UCLA)などの研究で、物を粉砕する咀嚼刺激が脳血流や認知機能と関係することが報告されています。
噛むという、ごく当たり前の日常動作が、脳を目覚めさせ、考える力や集中力を支える刺激になっているのです。
このことは、事実なのです。
奥歯やかみ合わせが崩れると、刺激は弱まってしまう
大切な点は、どこで噛んでいるか、という問題です。
奥歯は、噛む力を最も効率よく伝える場所です。
しかし、かみ合わせのズレや、奥歯の不調、無意識の片噛みなどがあると、この刺激は大きく弱まってしまいます。
本人は噛めているつもりでも、脳に伝わる刺激は十分でないこともあるのです。
その結果、噛むという行為が、本来持っている脳への刺激としての役割を果たしにくくなるわけです。
物忘れは、老化だけの問題ではない
物忘れが増えたとき、もう年だから、と自分を納得させようとする方は多いと思います。
けれど、近年の医学研究が示しているのは、老化とは、身体や脳がどれだけ反応しているかの問題であるという新しい考え方なのです。
刺激が減り、反応が鈍くなると、脳は使われていないと判断し、働きを落としやすくなります。
逆に言えば、適切な刺激が保たれていれば、年齢を重ねても、脳は働き続ける余地を残していることになります。
全身を一つとして考える医療
こうした考え方に基づき、かみ合わせや奥歯の状態を含め、全身を一つのシステムとして整えていく医療の考え方も広がりつつあります。
その一つが、トータルヘルスケアプログラム®︎という治療の選択肢です。
このプログラムでは、口腔だけ、脳だけを見るのではなく、噛む・姿勢・筋肉・神経・生活習慣といった要素を関連して見直していきます。
これは、物忘れを治す、といった単純な話ではなく、脳が反応しやすい環境を、もう一度整えていくという考え方となります。
不安を一人で抱え込まないで!
物忘れや体調の変化に気づいたとき、不安になるのは自然なことですが、恥ずかしいと思う必要は、まったくありません。
朝日新聞の記事をきっかけに、多くの方が「自分だけではなかった」と感じたと教えてくださいました。
もし、最近、少し気になる、以前と違う気がする、そう感じているなら、どうか一人で抱え込まず、プレミアムコンサルテーション®︎を受けてみてはいかがでしょうか。
おわりに
物忘れは、必ずしも、衰え、の始まりではありません。
それは、これまでと同じやり方では足りなくなってきたという、身体からの静かなSOSのサインかもしれないのです。
噛むこと、整えること、刺激を取り戻すこと。
その積み重ねが、これからの毎日を支える力になる可能性があります。
朝日新聞の記事では伝えきれなかった思いを、ここに込めました。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
引用・参考論文
- Harvard University
- Neural plasticity and cognitive aging
- Stanford University School of Medicine
- Brain responsiveness and aging
- University of California, Los Angeles (UCLA)
- Mastication, cerebral blood flow, and hippocampal activity
- Tohoku University
- Chewing function and cognitive performance
- The University of Tokyo
- Oral function and brain activation
- Nature Reviews Neuroscience
- Neural activity, stimulation, and cognitive maintenance
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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