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イタリア人と日本人、どちらが虫歯になりやすいのか?

2026年2月13日

結論からいいます。

イタリア人は味わって守り、日本人は頑張って削ります。

統計的に見ると、日本人のほうがイタリア人より虫歯の経験が多い、と言われています。

というと、日本人は歯ブラシが上手くないのかというと、そういうわけではありません。

その差は、文化と、時間の使い方にあると考えられます。

イタリアでは、食事を楽しみ、家族と語らい、身体を大切にするという日常の何気ないリズムが、自然と歯を守ることにつながっています。

一方、日本では、忙しさ、我慢、便利さが、知らず知らずのうちに歯の健康を奪っていると考えられます。

歯は、文化を映す鏡ともいわれます。

イタリアの人々が、食事や人生を謳歌する味時間で歯を守るのに対して、日本人は我慢の時間で歯に負担をかけ続けているのです。

というと、虫歯の多さの差は、時間の使い方の違いなのかもしれません。

1.歯は文化

虫歯は見方を変えると、社会の習慣やリズム、食事の作法、家族のつながりの中で育まれる文化的現象とも考えられます。

イタリアと日日本は、どちらも食文化が豊かな国ですが、食べ方、味わい方、医療との距離感は驚くほど異っているのです。

2.イタリアは、皆んなと一緒に食べることで口の健康を守っています

イタリアは、家族と時間を共有する哲学があると考えられます。

朝のエスプレッソ、昼のパスタ、夜の前菜とワインなど。

つまり、食事は栄養摂取だけとして捉えていなく、社交と休息の場であると考えているのです。

2023年のイタリア国立公衆衛生研究所の調査では、12歳児の平均DMFT(虫歯・喪失・充填歯の合計)は1.2本と低いのです。

間食は午後に果物を少し食べる程度で、食べる時間をキチンと守る=健康を守る、という考えが根づいているのではないでしようか。

イタリアでは、食後にゆっくり会話を楽しむ時間があり、この食後の一見すると無駄とも思えるような余白の時間が、唾液の分泌を促して、口内を自然に中性へ戻してくれるのです。

つまり、食事を摂り始めると、20分ほど、口の中がずっと酸性に偏るので、この雑談の時間があることで、中性に戻る時間を確保してくれるのです。

言い方を変えると、語り合う時間が、歯の休息時間になっているのです。

3.日本は、多様で便利な食が生んだ口への負担

日本は、世界でも珍しいほど食が多様で便利な国と言えるでしょう。

いつでもコンビニで温かいご飯も甘いパンも買える。

ただ、その便利さが、仕事中の差し入れ、午後の甘い飲み物、夜食のカップ麺などなど。

こうした間食が一日中続くことで、歯は長時間、酸にさらされるわけです。

厚生労働省の2023年の歯科疾患実態調査によると、日本の12歳児の平均DMFTは2.0本前後とイタリアよりかなり高いのです。

成人の虫歯経験率も約90%。

さらに、最近では柔らかい食事が増えたことで咀嚼回数が大幅に減って、唾液の分泌が減り、そのことで再石灰化が妨げられています。

便利さ、柔らかさ、という快適なことが、歯を弱くしているといえるのです。

4.宗教と身体観

文化の背景には、宗教と身体観の違いもあると考えられます。

イタリアのカトリック文化では、身体は神の授かりものなのです。

そのため、身体を清潔に保って、身体をいたわることは、信仰の延長線上にあるのです。

また、四旬節(Lent)などの宗教的節制期間には、甘いものや肉を控える習慣があり、結果的に糖の摂取が抑えられています。

これは、虫歯の予防として万全です。

日本はどうでしょうか?

仏教的価値観は、身体は苦を耐える器という考えが根強くあります。

その精神からいうと、痛みや不調を我慢で乗り切ろうとする考えが肯定されて、歯の痛みも後回しにされがちになります。

最近は薄れてきているとはいえ、宗教が、歯への意識や医療行動にまで影響している可能性もあるのです。

5.医療制度と家庭教育

イタリアの国民保健制度(Servizio Sanitario Nazionale)では、子どもの歯科検診やフッ化物塗布が公的に提供されています。

家庭でも食後の歯磨きが日常化し、親子で一緒に磨く姿が当たり前の光景になっています。

日本でも学校歯科検診はありますが、虫歯だから治療しましょう、という治療勧告がメインで、予防教育についてはサブ的な扱いです。

となると、虫歯があるから歯医者に行きなさいという形になり、イタリアと比べて、虫歯にならないための予防に力がはいっているとは言い難いのです。

6.食の社会性

イタリアでは、家族が一緒に食卓を囲むことが習慣化しています。

誰かと食べる行為が、食事のリズムを整えて、無意識に間食を減らすような心理的な効果をもたらしているといえます。

Colomboら(2021)の研究でも、共食が多い子どもほど、虫歯が少ないことが確認されています。

日本では、共働きや塾通いなどで一人で食べる孤食が増えて、速く食べる、自分一人だから甘味に偏るといった傾向が生まれています。

誰かと食べる、という社会的リズムの欠如が、口のリズムも乱しているのです。

7.美意識と歯の見せ方

イタリアでは、笑顔と白い歯は誠実さと自信の象徴といわれます。

ホワイトニングや矯正は一般的で、歯を見せることに抵抗がありません。

そのため、歯科通院も自然な習慣となっているのです。

その一方で、日本では人前で歯を見せて笑うことを控える文化が長く続いてきました。

歯並びの不均衡を個性として受け入れる風潮もあり、他人に見せる歯への意識は高まりにくかったのです。

その結果、歯のケアが表立ってではなく、裏側で行うことになりやすいのです。

8.まとめとして。

イタリアでは、家族と食卓を囲み、会話を楽しみ、身体を大切にする。

そのような、ゆとりある時間が、自然と歯を守っている時考えられます。

それに対して、日本では、忙しさと便利さの中で、歯をいたわる時間が失われてきています。

虫歯の差は、歯科医療の技術ではなく、文化と時間の使い方が生み出していると考えられるのです。

※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。

参考文献

  1. Istituto Superiore di Sanità. Relazione sulla salute orale in Italia 2023. Roma, 2023.
  2. Colombo, S. et al. “Family mealtime frequency and dental caries in Italian children.” Community Dentistry and Oral Epidemiology, 2021.
  3. World Health Organization. Sugars and Dental Caries: Technical Note. Geneva, 2015.
  4. Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases. Tokyo, 2023.
  5. Matsumoto, H. et al. “School-based fluoride mouth-rinse program and oral health in Japan.” BMC Public Health, 2024.
  6. FAO. Food Balance Sheets: Sugar Consumption Data by Country. 2023.
  7. Guglielmi, F. “Il sorriso come linguaggio sociale: estetica dentale nella cultura italiana.” Rivista Italiana di Sociologia della Salute, 2020.
  8. Takahashi, N., Nyvad, B. “Ecological approach to dental caries prevention.” J Dent Res, 2011.
  9. Li, Z. et al. “Global burden of dental caries 1990–2021.” BMC Oral Health, 2025.
医院名
医療法人社団聖和厚生会 玉川中央歯科クリニック
所在地
〒158-0094
東京都 世田谷区 玉川4丁目7-8-1F
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