不妊治療には歯科治療が不可欠である
2025年10月31日
みなさん、こんにちは。Dr.Ryoです。今回のテーマはこちらです。
不妊治療には歯科治療が不可欠である
近年、不妊の原因は婦人科領域に限定されるだけでなく、全身的要因や生活習慣の影響が大きいことがわかってきました。特に口の中の環境、とくに歯周病は、妊娠率の低下、流産、早産、低体重児出産などのリスク要因になるのではないかと考えられています(Offenbacher et al., 1996)。
このコラムでは、不妊治療における歯科治療について、歯周病、妊娠出産リスクの関連、免疫機能の観点からお話ししていきます。
歯周病と全身
歯周病は慢性炎症性疾患で、歯肉組織の炎症が継続して血流へ炎症性サイトカインや病原菌を出し続けることで、全身の免疫と代謝バランスに影響を与えます(Kinane & Stathopoulou, 2017)。
特に、インターロイキン6、TNF-α といった炎症性サイトカインは、血管の内皮機能を破壊して、動脈硬化、糖尿病、心疾患などのリスクを高めることが知られています (Loos, 2005)。また、同時に、このような慢性炎症は女性の生殖機能にも影響を及ぼすことから、不妊の一因となる可能性が報告されています
歯周病と妊娠・出産リスク
妊娠期の歯周病は、早産、低出生体重児のリスク因子であることが多数の研究で示されています(Offenbacher et al., 1996; Vergnes & Sixou, 2007)。歯周病菌の毒素や炎症性サイトカインが胎盤に影響を与えて、胎児の発育を阻害することが原因であると考えられいます。
また、妊娠前からの歯周病の治療法が不妊治療の成功率に影響する可能性があることも指摘されています。例えば、Hartら (2004) は、歯周病を有する女性では妊娠までに要する期間が長くなると報告しています。
このことから、歯周病は、妊娠のしやすさ、妊娠の維持、出産の安全性、に直結する重大因子といえるのです
免疫力と生殖機能
考えてみると、妊娠は免疫学的にみると特殊な現象といえなくもないのです。。母体は胎児という、半分異なる遺伝情報を持つ存在、を排除せず受け入れなければならないので、免疫機構は、寛容、防御のバランスをとっているといえます(Aluvihare et al., 2004)。
しかし、慢性炎症や免疫力の低下はこのバランスを崩して、不妊や流産を引き起こしやすくするのです。歯周病は慢性炎症の代表みたいなものであり、全身の免疫環境をマイナスに傾ける要因となるのです。
ただ、免疫力を高めて、炎症をコントロールすることができれば、着床環境や胎児の発育環境を改善できる可能性があります。そのため、歯周病治療は不妊治療の一環として、免疫の改善に導く重要な要素といえるのです。
歯科治療の役割
歯周病の治療は、口の中の炎症を軽減するだけではなく、全身的な炎症を低下させ、妊娠・出産リスクの軽減にプラスの影響をあたえます。実際、歯周治療によってCRPやインターロイキン6が低下したことを示す研究も存在します (Ide & Papapanou, 2013)。
それだけでなく、妊娠中の歯科治療は安全で、むしろ母体と胎児の健康のために推奨されるべきであると専門学会も提言している (American College of Obstetricians and Gynecologists, 2013)。
不妊治療を受ける女性にとっても、妊娠前に口の中をより清潔に整えておくことは重要な妊娠の準備となりえます。
トータルヘルスケア的アプローチ
不妊治療の成功には婦人科的治療だけでなく、免疫機能の調整、炎症の制御、生活習慣の改善が必要です。歯科治療はその中心的役割を担っていると考えています。
さらに、食生活の見直し、睡眠の改善、ストレスマネジメントなど、総合的に免疫力を高める取り組みが必要になります。医療法人社団 聖和厚生会が提供する トータルヘルスケアプログラム® は、最大100時間超の精密な分析に基づいて栄養・免疫・ストレスを総合的にサポートし、妊娠・出産を目指す女性に有用な枠組みの治療プログラムになっています。
最後に
不妊治療するのであれば、歯科治療は決して軽視できません。歯周病は妊娠成立率や出産に悪影響を及ぼす要因であり、その原因には慢性炎症と免疫機能の破綻が存在するのです。そのために、不妊治療と並行して歯科治療介を行うことは、妊娠の可能性を高め、母子の健康を守るために極めて重要であると考えてられまする。
つまり、妊娠、出産には、婦人科・歯科・内科が連携したトータルヘルスケアが求められるです。免疫力を整えることが、不妊治療の成功と安全な出産への道を開くのです。
最後まで、読んでくださってありがとうございました。
みなさんや、みなさんのご家族、ご友人が、健康面の問題点を抱えた時、実は、歯科領域というアプローチが健康へと導いてくれると、私は信じています。
統括院長 Dr.Ryo
このコラムは、ウエスト歯科クリニック、玉川中央歯科クリニックでそれぞれ、別の内容で掲載しています。
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参考文献
- Offenbacher S, et al. “Periodontal infection as a possible risk factor for preterm low birth weight.” J Periodontol. 1996;67(10):1103–1113.
- Yergnes JN, Sixou M. “Preterm low birth weight and maternal periodontal status: a meta-analysis.” Am J Obstet Gynecol. 2007;196(2):135.e1-7.
- Hart R, Doherty DA, et al. “Periodontal disease and time to conception.” BMJ. 2004;329:434–435.
- Kinane DF, Stathopoulou PG. “Periodontal diseases.” Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17038.
- Loos BG. “Systemic markers of inflammation in periodontitis.” J Periodontol. 2005;76(11 Suppl):2106–2115.
- Ide M, Papapanou PN. “Epidemiology of association between maternal periodontal disease and adverse pregnancy outcomes – systematic review.” J Clin Periodontol. 2013;40 Suppl 14:S181–194.
- Gilhar A, et al. “The immunology of pregnancy.” N Engl J Med. 2012;366:1815–1825.
- Aluvihare VR, Kallikourdis M, Betz AG. “Regulatory T cells mediate maternal tolerance to the fetus.” Nat Immunol. 2004;5:266–271.
- Paus R, et al. “Neuroimmunoendocrine regulation of hair and pregnancy.” Trends Immunol. 2014;35(1):32–40.
- American College of Obstetricians and Gynecologists. “Oral health care during pregnancy and through the lifespan.” Committee Opinion No. 569. Obstet Gynecol. 2013;122:417–422.


