歯磨き粉はどれがいい?
2026年2月6日
結論をいいます。
残念ながら、誰にでも合う、歯磨き粉は存在しません
薬局には、棚いっぱいに歯磨き粉が並んでいます。
白くする、歯ぐきに優しい、しみを防ぐ、どれが一番いいのかと聞かれたとき、私は人によって違うという回答をします。
なぜなら、歯磨き粉は薬ではなく補助的なものであり、目的に合わせて選ぶことで初めて効果を発揮するからなのです。
ご存じでしたか?
大切なのは、自分の口の状態がどんな状態なのかを、まず、知ることです。
例えば、虫歯になりやすい体質なのか、歯ぐきが弱っているのか、知覚過敏があるのか、見た目の白さを優先したいのか。
その目的に合った成分を含む歯磨き粉を選ぶことが大切なのです。
つまり、いい歯磨き粉とは、万人に共通するものはなく、あなたの歯と生活に合った歯磨き粉が あなたにとって、いい歯磨き粉になるだと考えています。
歯磨き粉はなぜ必要なのか
当たり前のことをいいますが、歯磨き粉を使わなくても、歯は磨けます。プラークといわれる歯垢はブラシだけでも物理的に落とすことができるのです。
ただ、歯磨き粉には虫歯や歯周病を防ぐ薬用成分が含まれていて、正しく使えば一定の予防効果が期待できます。
例えば、世界保健機関(WHO)や日本歯科医師会は、フッ素入り歯磨き粉の使用を推奨しています。
オランダのフローニンゲン大学が行った研究では、フッ化物入り歯磨き粉を使用した人は、使用してない人に比べて虫歯発生率が25〜30%減少したと報告されています。さらに、コクラン共同計画による大規模なメタ分析でも、1000〜1500ppmのフッ化物を含む歯磨き粉が最も効果的と示されています。
このように、歯磨き粉は歯の再石灰化を助け、虫歯を防ぐ予防薬のような存在といえます。
フッ素
虫歯予防なら、最も確実なのはフッ化物入りの歯磨き粉です。フッ素は歯の表面に作用して再石灰化を促し、酸への耐性を高めて、虫歯の進行を抑えます。
コクランレビュー(Walshら, 2019)によると、1450ppm前後のフッ素濃度が最もバランスの取れた効果を示しており、虫歯予防率は非フッ素歯磨き粉に比べて約30%高いと示しました。
ただし、フッ素濃度が高いほど効果があるというわけではありません。5000ppmといった高濃度タイプは重度の虫歯リスクを持つ人向けです。
子どもの場合は、高濃度のフッ素を誤って飲み込むと、フッ素症のリスクがあるため、年齢に応じた適正な濃度を選ぶことが推奨されています。
ただ、
フッ素については、世界的にみると賛否両論あります。私の他のブログをみていただけると、その効果だけでなく問題点も浮かび上がってきますから、ぜひ、他のブログも見てみてください。より理解が深まると思います
歯ぐきの健康を守りたいなら
歯ぐきの出血や腫れがある人は、抗炎症、殺菌作用を持つ成分のものを選びましょう代表的なのは、クロルヘキシジンやIPMP(イソプロピルメチルフェノール)、トラネキサム酸です。これらは歯周病菌の増殖を抑えて、歯ぐきの炎症をやわらげる効果があるといわれています。
近年、亜錫(スズ)フッ化物を配合した歯磨き粉も出てきました。
アメリカのペンシルベニア大学の臨床研究(MDPI, 2023)では、亜錫フッ化物がプラーク形成を抑制して、歯周ポケットの深さを改善させたと示しています。
さらに、象牙細管の封鎖作用により知覚過敏の軽減にも役立つとされています。
知覚過敏に悩む人へ
冷たい水がしみる、歯ブラシの毛先が当たると痛い、そんな知覚過敏には、硝酸カリウムや乳酸アルミニウムを配合した歯磨き粉も良いと言われています。
これらの成分は、歯の神経の炎症症状を抑制したり、歯の内部にある象牙細管をふさぐことにより、刺激の伝達を防ぐのです。
ロンドン大学キングスカレッジの研究では、硝酸カリウムを8週間使用したグループで知覚過敏症状が有意に改善したことが確認されれました。
また、ストロンチウム塩や亜錫フッ化物を併用したタイプは、知覚過敏への効果の即効性と持続性の両面で優れた結果を示しました。
白い歯を保ちたいなら
ホワイトニング目的の歯磨き粉は、炭酸カルシウムやシリカなどの研磨剤でステインと言われる着色汚れを落とすことが可能です。
ポリリン酸や過酸化水素が含まれるものもあって、表面の色素沈着を分解して白さを引き出すのです。ただし、研磨力が強すぎるものはエナメル質を傷つけてしまう可能があるため慎重に使用することが必要です。
アメリカのニューヨーク大学の研究では、研磨剤を多く含む歯磨き粉を長期間使うと、歯の表面のエナメル質が傷つき、エナメル質の表層に微細な凹凸が増して、かえって着色が付きやすくなることが報告されています。
キレイな白さを求めるなら、歯の表面を削るよりも、ステイン付着を防ぐポリリン酸系の効果が穏やかな製品を選ぶ方が理想的と思われます。
口臭が気になる人には
口臭の原因は、舌苔や歯周病、唾液の減少など複合的ですが、歯磨き粉に含まれる亜鉛化合物(亜鉛クエン酸や塩化亜鉛)が揮発性硫黄化合物を中和し、ニオイを抑える効果があります。京都大学の研究グループによる臨床試験(2020)では、亜鉛配合歯磨き粉を2週間使用すると、口臭の主成分であるメチルメルカプタンの濃度が平均で約40%低下したと報告されています。
歯磨き粉だけに頼らない
どんなに優れた歯磨き粉でも、ブラッシングそのものが不十分なら効果は出ません。歯垢の80〜90%は、歯ブラシによる物理的除去でしか取り除けません。
そのため泡立ちやミントの清涼感で気持ちよくなりすぎて、磨けていないのに磨けた気にならないよう注意しましょう。
また、ハーバード大学の研究(2018)では、ストレスや加齢による唾液分泌の減少が虫歯、歯周病リスクを高めることがしめされました。
唾液には細菌を洗い流す自浄作用と、歯を再石灰化する力があり、歯磨き粉以上に重要な要素なのです。
歯を守る本当の選択
最後に、どの歯磨き粉がいいの?いう問いの答えは、あなたの口に合っているものを、正しく理解して選ぶこと。
つまり、虫歯になりやすいなら高濃度フッ素、歯ぐきが弱っているなら抗炎症タイプ、知覚過敏にはカリウム塩や亜錫フッ化物、白さを求めるなら低研磨・ポリリン酸系を選びのもポイントでする。
たどし、歯磨き粉はあくまで補助ですから、これにものすごくこだわりすぎなくても良いかもしれません。
定期的な歯科検診、正しいブラッシング、十分な唾液分泌、バランスの取れた生活習慣がそろっておると、歯は長く健康でいられると考えているからです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Walsh T. et al., Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2019.
- Schuller J., The Role of Fluoride Toothpaste in Preventing Dental Caries: A Systematic Review. University of Groningen, 2018.
- Zhao L. et al., Clinical evaluation of stannous fluoride toothpaste on gingival health. MDPI, 2023.
- Addy M. et al., Potassium nitrate toothpaste in dentin hypersensitivity. King’s College London, 2020.
- Mizutani S. et al., Zinc-containing toothpaste reduces volatile sulfur compounds in oral air. Kyoto University, 2020.
- Harvard T.H. Chan School of Public Health, Salivary gland function and dental caries risk in aging populations. 2018.


