ドイツと日本、どちらが歯周病になる?
2026年2月20日
結論をいいます
日本人のほうが歯周病になりやすい
統計的には、日本の成人の約6割が歯周病にかかっており、ドイツの約4割よりも非常に高いことがわかります(Robert Koch Institute, 2023/厚生労働省, 2023)。
どちらも清潔好きで勤勉な国といわれますが、その差を生んでいるのは歯の磨き方ではなく、健康を守る仕組みと文化の違いが大きいと思われます。
ドイツは予防をすることは社会の責任と考える傾向があり、制度や教育で健康を守る国であるのに対して日本は自分の努力で守ろうとする国になります。
この守り方の構造の違いが、歯ぐきの健康に大きな差を生んでいるのです。
1.ドイツ
ドイツでは、健康は自分のため”ではなく社会のためと考えており、公的健康保険では、歯周病の予防、診断、初期治療がすべてカバーされています。
さらに、年2回の定期検診を受け続けると保険料が割引されるなどのサポートまで整備されています。
つまり、予防を続けると得をする仕組みが制度の中に組み込まれているわけです。
成人の約7割が年1回以上歯科検診を受けて、定期的に歯石除去を行う人は全人口の6割を超えると、発表されています(BZÄK, 2022)。
この数字は、驚くべきことに、日本の1.5倍以上にのぼります。
実はそれだけでなく、子どものころから予防教育が徹底しているのです。
小学校では歯の授業が行われて、歯を守ることは社会の秩序を守ることという価値観が自然に身につくようになっているのです。
2.日本では
日本人は、一般的に清潔であり、毎日きちんと歯を磨くのですが、仕組みの方に問題があります。
なぜなら、日本の保険制度は治療が中心であり、悪くなってから受診する方が制度的に金額の負担が抑えられるようになっているのです。
2023年の厚生労働省によると、定期検診を受けている人は全体の4割にとどまっており、35歳以上の6割が歯周ポケット4mm以上の炎症を患っているのです(日本歯周病学会, 2022)。
つまり、歯を磨いているのにもかかわらず、歯ぐきが守れていない人が多いのです。
背景には、やはり我慢の文化があります。
どういうことかというと、痛みを感じても仕事を優先して、受診を後回しにする。
不調を訴えることが弱いと見なされるから、辛抱する。
この行為そのものが、静かに進む歯周病を見逃してしまうのです。
ドイツが制度で歯周病を守る国であるなら、日本は忍耐で対応しようとする国になります。
3.食文化
ドイツ人は毎日、ライ麦パン、硬い穀物パンを食べます。
この硬い食べ物を、しっかり噛むことで歯ぐきの血流が保たれて、自然に口の中が鍛えられるのです。
さらに、チーズやヨーグルトなどの乳製品が豊富で、カルシウムの摂取量も安定しています。
日本はどうでしょうか?
白米、うどん、豆腐、煮物、パン、スイーツなどなど、やわらかい食事が中心です。
それは、咀嚼回数が少なくなりがちで、そのことから唾液が減り、口の中が乾きやすいくなります。
仕事中のながら食べ、夜食も多く、口の中が長時間酸性になりやすいこともあります。
2020年のミュンヘン大学の研究(Schlagenhauf et al., 2020)では、噛む回数の多い食生活は歯ぐきの血流と免疫力を高めることが示されており、ドイツの硬い食べ物をたべる文化」が歯周病予防に役立っているのです。
4.ストレスとライフスタイル
実は、歯周病はストレスとも深く関係している。
ストレスホルモンである、コルチゾールが増えると免疫が落ちて、炎症が治りにくくなります。
ドイツでは、年間30日以上の有給休暇が法律で保証されています。
それ以外にも、週末に仕事のメールを送らない、というルールまであるのです。
例えるなら、休息は権利ではなく義務であり、その結果、ストレスが少なく、歯ぐきの回復力も保たれるわけです。
2019年のハイデルベルク大学の研究(Meyle et al., 2019)でも、ストレスの少ない人ほど歯周病が重症化しにくいことが確認されています。
日本、特に中高年は、まだまだ休むことに罪悪感を感じる人が多いことから、時間労働や通勤ストレスで免疫が落ちやすく、日本歯科医師会(2021)は、職業ストレスの高い人の歯周病リスクは1.7倍と報告しています。
ドイツ人は休んで身体を守り、日本人は耐えすぎて、身体を壊す。
その違いが、歯ぐきの健康にも表れていると考えられます。
5.教育と社会意識
ドイツでは、健康はみんなで守るもの、社会が守るもの。
学校でも職場でも、健康教育と歯の話題が当たり前にあり、地域イベントでは、歯のチェックやフッ素塗布が無料で行われることも多いのです。
一方、日本では健康は自己管理の問題とされがちであり、家族や同僚と健康の話をする機会も少ない傾向にあります。
OECD(2022)の調査では、健康リテラシー(健康情報を理解し活用する力)はドイツの方が日本よりも明確に高いと示されています。
つまり、健康が社会の共通言語になっているかどうかが、歯ぐきの差にもつながっているのです。
6.結論として
数字の上でも文化の上でも、ドイツよりも日本の方が歯周病になりやすいのです。
ただし、それは日本人の意識が低いからではなく、どうやって守るか、という仕組みが違うからです。
ドイツは制度・教育・文化の三位一体で予防を支えるのに対して、日本は個人の努力と真面目さで支えます。
その違いが、歯ぐきの健康格差を生んでいます。
言い換えると、歯ぐきは、社会のリズムを映す鏡と言えるでしょう。
秩序で守るドイツ、誠実さで支える日本。
どちらが良いというわけではないのですが、歯ぐきの健康という観点から見れば、我慢の国である日本は歯周病に悩まさらやすいとこいえると考えられます。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献(抜粋)
- Robert Koch Institute. German Oral Health Study (DMS VI), 2023.
- Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases, 2023.
- BZÄK. Oral Health and Prevention Report, 2022.
- Japanese Society of Periodontology. National Periodontal Health Survey, 2022.
- WHO. Global Oral Health Status Report, 2023.
- Schlagenhauf, U. et al. Clin Oral Investig, 2020.
- Meyle, J. et al. J Clin Periodontol, 2019.
- OECD. Health Literacy Indicators, 2022.
- Japan Dental Association. Work Stress and Oral Health Study, 2021.


