なぜ現代人の免疫は疲れているのか
2026年6月12日

感染症予防という言葉を聞くと、まずワクチンや薬を思い浮かべてしまいますが、本来、感染症から身を守る最初の仕組みは何なのか、を考えてみると、それは、私たち一人ひとりの身体に備わっている免疫になります。
重要なのは、その免疫が、今の生活環境の中で本当に十分に働ける状態にあるのかどうか、という点にあります。
免疫は強さではなく状態で決まる

免疫という言葉は、しばしば強い・弱いという二元論で語られます。
しかし免疫学的に重要なのは、単純な強弱ではなく、過剰に反応しないことや、必要なときに、必要なだけ反応できることや、反応したあと、きちんと収束できること。
つまり免疫とは、調整された状態(恒常性)なのです。
感染症に対して重要なのは、免疫を無理に高めることではなく、免疫が無理をせずに働ける身体条件を保つことである。
現代人の免疫は、なぜ疲れやすいのか

では、なぜ現代人の免疫は乱れやすいのでしょう。
その背景には、生活環境の大きな変化が考えられます。
とくに見逃せないのが食の変化です。
戦前の日本人が口にしていたのは、保存性の低い、加工度の低い食品が中心でしたが、現代では、数年単位で保存可能な食品が日常的に流通しています。
保存性が高いことは利便性の面では優れていますが、生体にとっては、分解・消化しづらい構造を持っているわけです。
実は、こうした食品を前提とした食生活は、消化器官や免疫系に、知らず知らずのうちに負担をかけていることになります。
そのため、現代人は免疫が弱くなったというより、免疫が常に対応を迫られ、休めなくなっている状態と考えていただくと、わかりやすいと思います。
消化は、口から始まっている

消化や免疫の話になると、胃や腸が注目されがちですが、消化の出発点は明らかに口になります。
例えば、噛み合わせが乱れて、十分に咀嚼できない状態では、食べ物は大きな塊のまま体内に入るわけです。
その結果、消化酵素が十分に作用しなくなり、腸に未消化物が届くようになり、腸管免疫が過剰に刺激されるといった連鎖が起こりやすくなります。
ということは、現代の消化しづらい食環境においては、噛めるかどうかが、免疫負荷を左右する要因になっているといえます。
口腔内の炎症は、免疫を消耗させる

もう一つ重要なのが、口腔内の炎症です。
歯周病は、単なる口の中の問題ではありません。
免疫学的に見ると、歯周病とは慢性的な免疫刺激が続いている状態にあります。
歯周病菌に対抗するため、免疫は炎症性サイトカインを出し続ける。
この状態が長く続けば、免疫は常に「戦闘待機状態」から抜け出せなくなる。
その結果、本当に対応すべき感染症に対して、反応する余力が低下する。
これは、免疫が弱いのではなく、免疫が消耗して疲労状態と言えるのです。
口腔と全身免疫をつなぐ視点

近年の研究では、口腔環境と全身免疫の関係が、より明確になりつつあります。
歯周病と、糖尿病、動脈硬化、免疫疾患との関連が報告されているのは、どういうことかと言うと、口腔内の慢性炎症が全身の免疫・炎症環境に影響するからなのです。
また、オーラル―ガット軸と呼ばれる概念では、口腔内の状態が腸内環境や免疫応答に影響を及ぼす可能性が示されています。
感染予防における順番

ここまで見てくると、感染症対策において、ある重要な視点が浮かび上がってきます。
それは、何をするかではなく、どの順番で考えるかという問題です。
免疫が慢性的に消耗した状態では、ワクチンや薬といった外部からの介入だけを重ねても、十分な効果は期待しにくいわけです。
そのため、まず整えるべきなのは、噛める口にすることであり、同時に炎症のない口にすることであり、消化に無理のかからない身体条件にする必要があるのです。
免疫を整えることは、最も基本的な対策

感染予防において本当に重要なのは、第一選択として、外部の何かを追加することではなく、本来備わっている免疫が、きちんと働ける状態に戻すことになります。
そのために、噛み合わせを整えるトータルヘルスケアプログラム®︎や、口腔内を清潔に保ち、全身炎症リスクを低減するケアは、免疫の上流に働きかける有効な手段となりえるのです。
ワクチンや投薬は、その基盤が整ったうえで検討される、最後の選択肢であるとこんがえるのが、最もバランスのとれた考えになるのです。
おわりに

感染症予防を考えるとき、私たちはつい何を使うか、何がいいのか、に目を向けてしまいます。
しかし本当に問われるべきなのは、免疫が働ける身体であるかどうかではないでしょうか。
口と消化、そして炎症。
そこから免疫を見直すことは、これからの感染予防を考える上で、避けて通れない視点であると、私は考えています。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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