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フランス人と日本人、どちらが歯周病になる?

2026年2月17日

結論を申し上げます

統計で見ると、歯周病になりやすいのは日本人になります。

フランスでは成人の約39%が中等度以上の歯周病を抱えるのに対し、日本では55〜60%にのぼります(Santé publique France, 2023/厚生労働省, 2023)。

両国とも清潔好きで医療水準も高いのですが、この差が生まれるのはなぜなのでしょうか?

その答えは、時間の使い方と身体との距離感にあると推測されます。

フランスでは、自分を整える時間を日常の中に組み込むのに対して、日本では我慢して頑張ることが健康の証になっているのです。

このわずかな違いが、歯ぐきの炎症にまで影響しているのだと考えられます。

1.フランスでは

フランス人にとって、健康とは自分を大切に扱うことです。

それは休むことでも怠けることでもなく、自分と向き合う時間を確保することという表現がピッタリかもしれません。

朝の身支度、ランチタイムのワイン、夜の散歩、そのすべてにゆとりのような余裕のある時間があるのです。

歯のケアも義務ではなく、心と身体を整える生活習慣の一部として、日常に組み込まれているのです。

制度面でも、予防が徹底しており、社会保障制度「セキュリテ・ソシアル」は、18歳までの歯科検診の費用を全額補助しています。

成人になっても歯石除去が低額で受けられ、予防が当然の習慣になっているのです。

フランス国立歯科連盟(UFSBD, 2022)の調査では、成人の7割以上が年1回以上の検診を受けています。

このことは、歯ぐきの健康は生活の質であるということを物語っています。

さらに、フランスでは 美と健康は同じと考える人が多いのも特徴です。

歯ぐきをマッサージしたり、アロマオイルで口をゆすいだりするのも一般的であり、歯ぐきの美しさが豊かな表情をつくる、という考えが、自然な予防を定着させているのです。

2.日本

日本では、健康は 頑張って維持するもの、とされがちです。

歯を丁寧に磨く人は多いのですが、歯医者に行くのは、まだまだ痛くなってから、という方が主流です。

2023年の厚生労働省の発表によると、定期的に歯科検診を受けている人は約4割程度であり、35歳以上では6割が歯周ポケット4ミリ以上の炎症を抱えていると示されています。(日本歯周病学会, 2022)。

背景には、我慢と、忙しさがありそうです。

多少の不調は仕方ない、迷惑をかけたくない、そんな思考がケアを先延ばしにするのです。

それだけでなく、医療制度も治療中心であり、予防への支援がまたまだ少ないのが現状です。

歯周病のメンテナンスが保険適用外のため、予防は高いという感覚が根強くあるのです。

つまり、日本では真面目さや、我慢がケアを遅らせる構造になっているのです。

フランスが、味わって守るスタイルであり、日本は我慢で守るスタイルと言えると思います。

3.食文化

フランスの食事は、歯ぐきを守る文化そのものだ。

朝、昼、夜のリズムが明確で、食事と食事のあいだに、歯や歯周組織にとっての回復の時間があるのです。

昼食には1時間以上をかけ、前菜、メイン、デザートを楽しみながらゆっくり食べます。

間食はほとんどなく、午後のおやつ(le goûter)は子どもだけ、という区切りが、唾液の分泌と歯ぐきの血流を保つことにつながるのです。

一方、日本の現代の食習慣は、朝は短く、昼は早く、夜は遅く。

その合間にコーヒーや甘い菓子を口にする方が多いと思います。

結果、口腔内は長時間ずっと酸性に傾いて、炎症を誘発しやすくなるのです。

2015年のWHOの発表では、糖の摂取量よりも摂取頻度が炎症を引き起こす、と指摘しています。

ということは、フランスの食事と食事との間に、時間的な空白のある食べ方は、歯ぐきの回復を促します。

それに対して、日本の絶え間ない、休みなく何かが口に入っている食事の習慣は、歯ぐきを休ませないことから、歯周病を悪化させやすいのです。

4.時間とストレス

歯周病を悪化させるのは、要因には、ストレスがあげられます。ストレスがあると、免疫力が落ち、炎症が治りにくくなるのです。

フランスでは、休むことが当たり前の権利としての認識が国民に浸透しています。

週35時間労働が法律で守られ、日本と比べて休暇も長いのです。

昼のカフェや夕方の散歩も、自分を整える時間として文化に根付いていると考えられます。

この自分を整える調律のような余白が、心理的な免疫として、結果的に炎症を抑えているわけです。

それに対して、日本の中高年の方は特に、休むことに罪悪感を抱く人が多い傾向があります。

長時間労働、残業、通勤の疲れ。疲労が慢性化し、無意識の歯ぎしりや食いしばりが増えるのです。

2021年の日本歯科医師会の発表では、ストレスが高い人ほど歯周炎が進行しやすいと報告されています。

つまり、フランスでは休むことが歯周病の治療になっており、日本では頑張ることで歯周病の進行を進めていることになっています。

5.美意識と笑顔

フランスでは、笑顔はその人の人生観を映すものという認識があります。

歯を見せて笑うことが自然で、歯ぐきの健康も自己表現の一部という考えです。

そのため、美容と医療の境界が少なく、メンテナンスへの意識が高い傾向がみられるのです。

日本では、古くから、口を見せない文化がありました。

大きく笑うことが無作法とされ、口元は隠すのが礼儀というものです。

その結果、ケアの動機が、痛みの解消に偏る傾向があり、美と健康の両立が後回しになるわけです。

結論として

日本の方が歯周病が多いのは、努力や衛生意識が低いからではありません。

フランスは、食事と食事の時間を区切り、会話を大切にしながら歯や口の中を整える国であるのに対して日本は、努力と我慢で健康を支える国という位置付けです。

2つを比較すると、お口の中にものを入れる時間が少ないフランスの方が、歯ぐきに回復の時間を与える、歯ぐきにやさしい余白をもっています。

長時間働き、休むことをためらう社会では、歯ぐきもまた静かに疲れていくのです。

一方、人生を味わう余白的な時間を持つ社会では、歯ぐきもゆっくりと回復するのです。

つまり、歯周病の差は、時間の使い方の差であるとも、言い換えることができるのです。

フランス人は整えて守り、日本人は頑張って削っている。

そのような特徴的が見えてきます。

※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。

参考文献(引用一覧)

  1. Santé publique France. Enquête nationale de santé dentaire, 2023.
  2. UFSBD. Rapport annuel sur la prévention, 2022.
  3. Ministère de la Santé et de la Prévention (France). Programme de prévention bucco-dentaire, 2022.
  4. WHO. Global Oral Health Status Report, 2023.
  5. Lefèvre, S. et al. Revue d’Odontologie et de Stomatologie, 2020.
  6. Sanz, M. et al. J Clin Periodontol, 2020.
  7. Japanese Society of Periodontology. National Periodontal Disease Survey, 2022.
  8. Ministry of Health, Labour and Welfare (Japan). Survey of Dental Diseases, 2023.
  9. Japan Dental Association. Work Stress and Oral Health Study, 2021.
  10. WHO. Sugars and Periodontal Disease: Technical Note, 2015.
医院名
医療法人社団聖和厚生会 玉川中央歯科クリニック
所在地
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