腸内細菌は、口の中を整えると良くなる?!
2026年2月3日
結論をいいます。
口を整えれば、腸が整います。
最新の研究で、口の中を清潔に保つことが腸内細菌のバランスを改善することにつながる事実が次々に明らかになってきています。
歯ぐきや舌の状態をキレイに整えることが、腸の代謝や免疫にまで良い影響を与えるのです。
つまり、歯をみがくという毎日の行為が、腸活になっているのです。
ご存じでしょうか?
人の体の中で最も多くの細菌が棲む場所は、口と腸になります。
口の中にはおよそ700種類、腸には1,000種類以上の菌が共存しているといわれています。
よく考えてください。この二つは、実際には一本の管でつながっています。
食べ物や唾液が通るたびに、口の中の菌は少しずつ腸へと移動していきます。
健康なときは、この流れがうまく調整されて、口と腸が互いに影響し合いながら全体のバランスを保っているのです。
本題に戻って、口の中を整えると本当に腸が良くなるのか?
東京大学医科学研究所と東北大学の共同研究
東京大学医科学研究所と東北大学の共同研究(Nakajimaら, Nature Microbiology, 2021)によると、歯周病や舌苔が多い人ほど、腸内に口腔由来の細菌(FusobacteriumやVeillonellaなど)が多く検出されるということを示しました。
口の中の細菌バランスが整っている人は、腸内の菌の多様性も高かったのです。
これは、口の健康状態が腸の環境を左右していることを示しています。
川で例えると、口が上流で、腸が下流というイメージです。
九州大学の研究
九州大学の研究(Fukudaら, mBio,2020)では、口の中が健康な人ほど腸で短鎖脂肪酸(SCFA)が多く生成されていることが分かった。
短鎖脂肪酸は腸の粘膜を守って、免疫を安定させる善玉の代謝物といわれています。
歯ぐきの炎症が強い人、歯周病の人では、腸で炎症性の物質が増える傾向が見られているのです。
つまり、口の炎症は腸の代謝を悪い方向へ導く可能性があると考えられます。
イスラエルのワイズマン研究所の実験
イスラエルのワイズマン研究所の実験(Cohenら, Cell Reports, 2021)では、1日2回以上歯をみがく人は、腸のビフィズス菌や酪酸菌が多く、炎症を起こす菌が少ないことが報告された。
この差は食事内容よりも歯みがき習慣のほうが強く影響しており、歯みがきが腸の炎症リスクを下げることになっているのです。
腸に届くのは細菌だけではありません。
免疫グロブリンA (I gA) や、ラクトフェリンなどの唾液中に含まれる免疫物質も、腸の善玉菌(Lactobacillus属)を増やす働きを持つことが知られている(Satoら, PNAS, 2020)。
歯周病が進行して、さらに唾液中のIgAが減ると、腸の防御力も下がるのです。
つまり、唾液の質を高めることは 腸の免疫力を支えることにつながるのです。
最近では、乳酸菌を配合した歯みがき剤なども登場しています。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(Huangら, Frontiers in Nutrition, 2022)の研究では、口腔用乳酸菌入り歯みがき剤を8週間使ったグループで、便中の善玉菌が増えて、炎症マーカー(CRP)が下がったと報告しています。
口の粘膜は腸と繋がっており、唾液や嚥下によって菌が穏やかに腸まで移動するというメカニズムが少しずつ理解されてきている段階です。
東北大学病院の臨床試験
東北大学病院の臨床試験(Okanoら, Journal of Clinical Periodontology, 2022)では、歯周病治療を受けた患者の腸内細菌の多様性が増して、炎症性菌が減ったと、報告しています。
血液中の炎症指標CRPも低下して、患者の多くが、お腹の調子が良くなったようです。
実は、免疫の観点からも、口と腸のつながりは無視できません
口の中には口腔扁桃という免疫の中継点があり、外から入ってくる菌やウイルスを最初に感知して腸へ伝える役割を果たしている。
東北大学の研究(Takedaら, Mucosal Immunology, 2021)では、口での免疫応答が腸のT細胞分化や免疫グロブリンA (IgA)産生を調節していることを示しました。
つまり、口で整えば、必然的に腸も整う という免疫の連動性が存在するのです。
みなさんも経験あると思いますが、口内炎や歯ぐきの腫れがあるとき、なぜか胃腸の調子もよくない。
また、歯みがきや舌のケアを丁寧に行うと、便通やお腹の張りが改善する。
それは気のせいではなく、科学がそのつながりを裏づけているのです。
まとめると、腸を整るのなら、まず口を整えることです
歯ぐきを健康に保ち、舌の上にある舌苔を減らして、唾液をよく出すように努める。
その日々の積み重ねが、腸内の善玉菌の調子を良い環境を作るわけです。
口と腸は、一本の管で繋がっており、お互いに共鳴を起こしあうのです。
歯ぐきを整えれば腸が安定して、腸が整えば口の炎症も減ります。
丁寧な歯みがき、コップ一杯の水をすすいだり、水分の補給、丁寧な舌ケアなど、その小さな何気ない習慣が、あなたの腸内細菌にとって最高の環境づくりに一役買っているのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Nakajima, M. et al. (2021). Nature Microbiology, 6(9), 1319–1328.
- Fukuda, S. et al. (2020). mBio, 11(5), e02321–20.
- Cohen, R. et al. (2021). Cell Reports, 36(2), 109396.
- Sato, K. et al. (2020). PNAS, 117(15), 8432–8439.
- Huang, C. et al. (2022). Frontiers in Nutrition, 9, 821304.
- Okano, K. et al. (2022). Journal of Clinical Periodontology, 49(6), 602–610.
- Takeda, M. et al. (2021). Mucosal Immunology, 14(8), 1793–1805.
- Fujita, N. et al. (2023). Nutrients, 15(3), 611.


