なぜ知覚過敏は起こるのか
2026年5月5日

結論 をいいます
唾液が減ると知覚過敏が起こります
最近、冷たいものがしみる、歯磨きで痛すぎる、そんな経験が増えているなら、口の乾燥が関係している可能性が高いです。
唾液が減ると、歯の表面を守っている薄い保護膜であるペリクルがはがれやすくなります。すると、歯の内側にある象牙質が露出しやすくなり、温度や酸の刺激が神経まで届いてしまいます。これが知覚過敏というものです。
つまり、口が乾くことは歯の防御力を低下させるという状態でもあるのです。平たく言うと、唾液が少ないと、歯は裸の状態で外界にさらされることになり、冷たい水、熱いスープ、歯ブラシの毛先による摩擦熱などの、わずかな刺激でも痛みを感じるようになってきます。
唾液の働き

唾液のほとんどは水分ですが、残りの1%には驚くほど重要な役割を持つ成分が含まれています。
たとえば、唾液に含まれるムチンやプロリンリッチタンパクは歯の表面に吸着して獲得被膜であるペリクルという保護膜を作ります。
ペリクルという膜は目に見えませんが、酸や摩擦から歯を守って、刺激が神経まで届かないようにしています。
さらに、唾液は酸を中和して口の中のpHを一定に保ち、カルシウムやリン酸を補給して歯の表面を修復する再石灰化も行うのです。
それ以外にも、唾液にはリゾチームや免疫グロブリンといった抗菌成分も含まれ、虫歯菌や歯周病菌の繁殖を防ぐ働きもあります。
このように、唾液は歯と歯ぐきを守る防御システムといえる大切な生体防御の要となるものなのです。
乾燥が引き起こす痛み

歯がしみる原因は、歯の中にある象牙質の細い管である象牙細管を通して刺激が神経に伝わることです。
唾液がしっかりあると、この細管の入り口はペリクルや唾液成分でふさがれているため、刺激が中まで届きません。
しかし、口が乾くとこの保護膜が壊れ、細管がむき出しになります。すると、冷たい水、ブラシの毛先による刺激、酸味のある飲み物などが直接象牙質に触れて、神経が敏感に反応してしまうのです。
乾燥は、まさに歯の防御壁が少なくなった状態であり、防御がなくなった歯は、小さな刺激であっても、痛みや違和感を訴えるようになります。
乾燥と知覚過敏

アメリカ・ペンシルベニア大学の調査では、唾液の分泌が少ない人ほど知覚過敏の症状を訴える割合が高くて、口の中のpHも酸性に傾いていることが確認されています。
日本大学歯学部の研究でも、唾液腺の機能が低下した患者、例えば、シェーグレン症候群などは、健康な人に比べて知覚過敏を感じる頻度が著しく高いことが報告されています。
また、ソウル大学と慶熙大学の共同研究(2023年)では、マスクを長時間着用して口呼吸が増えた人の中に、口が乾く、冷たいものがしみる、と訴える人が増加したと示されました。
これらの研究は、唾液の減少と知覚過敏が密接に関係していることを科学的に示しています。
現代人の乾燥要因

加齢とともに唾液腺の働きは低下していき、抗うつ薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬などの副作用でも唾液の分泌量は減ります。
ストレスや睡眠不足も自律神経のバランスを乱して、唾液の分泌を抑える要因となりえます。
近年、注目されているのがマスクによる口呼吸です。
藤田医科大学やシンガポール国立大学の研究では、マスクが鼻呼吸を妨げ、無意識に口呼吸を誘発することが示されています。口呼吸は唾液の蒸発を早め、粘膜や歯の乾燥を進めるのです。
つまり、現代の知覚過敏リスクはマスクの使用状態に、影響されているのです。
乾燥を防ぐための方法

知覚過敏を悪化させないためには、唾液を減らさないようにすることが重要です。
こまめな水分補給、よく噛む食事、ガムや飴による刺激、唾液腺マッサージなどは有効な方法と思います。
乾燥が強い人には、夜間の加湿器や口腔保湿ジェルの使用も推奨されます。
歯磨き剤を選ぶ際は、硝酸カリウムや乳酸アルミニウムなどの「知覚過敏用成分」やフッ化物配合の製品を使うことで、象牙細管の開口部をふさぎ、痛みの原因を遮断する効果が一定程度、得られます。
歯科医院では、レーザー照射や樹脂コーティングで細管を封鎖する治療も行われていますが、根本的な予防はやはり唾液を減らさない生活習慣なのです。
結論 として

歯のしみる原因は、歯の問題だけではありません。
口の乾燥は、歯の表面を守る膜を奪って、象牙質をむき出しにしてしまいます。唾液は歯にとっての天然のバリアであり、これが失われると歯は冷気や酸などの刺激に耐えられなくなってきます。
つまり、口が乾燥すると歯がしみる、というのは、体の自然な防御が低下しているか、失われた結果なのです。
乾燥対策は美容や口臭予防だけでなく、歯の健康を守るための根本的なケアになります。
私たちの口の中では、唾液という地味ですが、信頼のおける防御機構が、毎日、歯を守っているのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Brännström M. Hydrodynamic theory of dentinal pain. J Endod. 1986.
- Dawes C. Salivary flow patterns and oral health. J Am Dent Assoc. 2008.
- Fox PC, et al. Sjögren’s syndrome: oral and dental considerations. J Am Dent Assoc. 1985.
- Saito T, et al. Prevalence of dentin hypersensitivity in patients with xerostomia. Nihon Univ School of Dentistry. 2017.
- Zhu JH, et al. Effects of long-duration wearing of N95 respirator. Natl Univ Singapore, 2014.
- Fujita Y, et al. Heated humidification and breathing pattern. PLOS ONE, 2019.
- Kim Y, et al. Oral microbiome and saliva during the COVID-19 pandemic. Front Oral Health, 2023.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
▶︎Dr. RyoのYouTubeはこちら
▶︎Dr. Ryoのプロフィール


