重度の歯周病になると心臓病になる?
2026年8月28日

結論を言います
歯ぐきの炎症は、血管の中まで届いています
重度の歯周病になると、心臓病のリスクは確かに上がるといわれています。
その理由は、歯ぐきで起きた炎症が血液に乗って全身をめぐり、心臓や血管の中で火種として燃え続けるからです。
ただし、火種といっても静かな火種なので、すぐに症状がでることはありません。
近年の研究では、歯周病菌が血管の内側に入り込み、動脈硬化や心筋梗塞を悪化させることが証明されています。
つまり、歯ぐきの出血や腫れは、体全体の炎症サインでもあるのです。
口の中の炎症は、血液に乗って全身へ

歯周病は、歯を支える骨や歯ぐきが細菌によって慢性的に炎症を起こす病気です。
例えば、歯ブラシをすると出血したり、歯ぐきが腫れたりする、その症状が歯周病の始まりになります。
問題は、その炎症が局所で終わらないことなのです。
歯ぐきの血管から、細菌や炎症物質が血液に入り込んで、全身の血管を刺激してしまうのです。
ハーバード大学の研究では、歯周病菌が血小板にくっついて血管内を移動して、炎症を広げていくことが明らかになっています。
こうして、口の炎症が血管の炎症に形を変えていき、動脈硬化のスタートボタンを押してしまうという流れとなるのです。
血管の中に、歯周病菌の足跡

心臓の血管が詰まる原因となるのが、動脈プラーク(脂肪と炎症の塊)と言われるものです。
その中から、実際に歯周病菌のDNAが見つかっています。
東京医科歯科大学の研究では、心筋梗塞を起こした患者の約半数の血管プラークから歯周病菌が検出されました。
これは、菌が血流を通じて血管の壁にたどり着き、炎症を起こしていたことを意味すると考えられます。
つまり、歯ぐきの奥でうずく炎症が、心臓の血管の中にも潜入していることになるのです。
血管の炎症は、動脈硬化を進める

血管の内側は、本来なめらかであり血液がスムーズに流れています。
しかし、炎症が起きると、血管の壁が厚く硬くなり、血液の通り道が狭くなるのです。
そこに悪玉コレステロール(LDL)がたまり、酸化して炎症をさらに悪化させるのです。
ハーバード大学のチームによると、歯周病による慢性炎症が続く人は、血液中の炎症マーカー(CRP)が高く、心臓病になるリスクが約1.5倍に上がるといわれています。
つまり、歯ぐきが腫れているということは、血管も腫れている状態と同じと言えなくもないのです。
歯周病の人は心臓病になりやすい

スウェーデンの長期追跡研究では、重度の歯周病を持つ人は、そうでない人に比べて心筋梗塞の発症率が2倍。
また、歯ぐきのポケットが深い人ほど、冠動脈疾患(心臓の血管が詰まる病気)を起こしやすいこともわかった。
これは偶然ではなく、歯周病そのものが心臓病の独立した危険因子であることを示しているのです。
喫煙や高血圧、糖尿病と同じように、歯ぐきの健康も心臓の寿命を左右していることになります。
炎症が続くと免疫が誤作動

炎症が長く続くと、免疫は疲れてしまい、やがて暴走します。
なぜなら、歯周病菌の毒素(リポ多糖など)が血液に入ることで、免疫が自分の血管を敵と誤認し、攻撃してしまうからなのです。
この免疫の誤作動が、動脈硬化をさらに進行させるのです。
つまり、口の炎症が免疫のスイッチを狂わせて、血管の内側をじわじわ傷つけていくのです。
命に関わる、感染性心内膜炎

重度の歯周病を放置すると、細菌が血液を通じて心臓の弁に付着して、感染性心内膜炎という重い病気を引き起こすことがあります。
発熱、倦怠感、心雑音などの症状から始まり、放っておくと弁の機能が壊れて、命に関わることもあるのです。
特に人工弁を入れている人や、先天的な心疾患のある人は要注意です。
このため、心臓病を持つ患者が歯科治療を受ける際には、抗菌薬の予防投与が行われることもあるのです。
ということは、歯ぐきの出血は、心臓への感染ルートになり得るのです。
歯周治療で、心臓が元気に!

朗報があります。
歯ぐきの炎症をきちんと治療すると、心臓の状態も良くなるのです。
ハーバード大学と東京医科歯科大学の共同研究では、歯周病を治療した患者で、3か月後に血液中の炎症マーカーが30%低下して、さらに血管の柔軟性も改善し、血流がスムーズになったと報告されています。
つまり、歯を治すと血管も若返るのです。
口の健康が、心臓の健康を支えていることになります。
日本人の生活習慣にも潜むリスク

かつて日本人は心臓病が少ない民族といわれていました。
しかし食生活の欧米化と高齢化により、今では動脈硬化性の心疾患が増えている。
東京大学の調査では、歯周病が進行している人ほど、血圧・血糖・中性脂肪が高く、生活習慣病と同じ炎症パターンを示していたそうです。
つまり、歯周病と生活習慣病は同じ炎症グループの病気になります。
結論として、歯ぐきを守ることは、心臓を守ること

歯周病を放置すると、血管が炎症を起こし、血液が詰まりやすくなり、心筋梗塞や狭心症のリスクが上がる。
しかしその逆も真実です。
歯ぐきを治し、炎症を抑えれば、血管の炎症も静まり、心臓への負担が減るのです。
歯を磨くことは、心臓を磨くことです。
この言葉は比喩ではなく、最新の医学が示すれっきとした事実なのです。
この内容を読んで、クリーニングの可能性と、クリーニングとは、本来どうあるべきかを考えるキッカケになったのではないでしょうか。
審美をとるか、健康をとるか、その選択はあなたの手にあるのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
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- Libby, P. et al. (2019). Nature Reviews Cardiology, 16(8), 463–478.
- Söder, P.Ö. et al. (2018). Journal of Clinical Periodontology, 45(9), 1151–1160.
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- D’Aiuto, F. et al. (2022). Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 107(4), 1159–1169.
- Furuta, M. et al. (2020). Journal of Epidemiology, 30(5), 231–239.
- WHO. (2022). Global Oral Health Status Report.
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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