体調不良に歯は関係ある?
2026年9月4日

最近なんとなく体調がすぐれない
原因がはっきりしない不調が続いている
そんなときに、歯や噛み合わせの話をされると、スピリチュアルではないか?と少し戸惑う方も多いと思います。
通常、歯は口の中の問題であって、体調とは別だと考えることは、ごく自然な感覚だと思います。
ただ、近年、国内外の大学や研究機関から、口腔の状態と全身の健康が無関係ではないことを示す研究が、少しずつ積み重なってきています。
ここで大切なのは、歯が悪いと必ず病気になる、という極端な話ではありません。
むしろ、体は一つのシステムであり、歯や噛み合わせもその一部である、という視点で捉えることが大切だと考えています。
口は、体の入り口

口は食べ物の入口であると同時に、噛む、感じる、力を調整するという、非常に多くの役割を担っているのです。
特に、噛むという行為は、単なる粉砕作業ではなく、噛む力は、歯、歯根膜、顎の骨、筋肉、顎関節、神経を通して、全身とつながっています。
ハーバード大学関連の研究では、咀嚼機能が脳血流や認知機能と関連する可能性が示されており、噛むという行為が神経系にも影響を与えることが指摘されています。
つまり口は、消化器の一部であり、運動器でもあり、感覚器でもあるわけです。
噛み合わせが乱れると、体はどう反応する?

噛み合わせが乱れると、体は無意識のうちにそれを補正しようとします。
たとえば、噛みにくい側を避けて噛むとか、顎を少しずらして噛むとか、力を強めたり弱めたりして調整するとかです。
こうした小さな補正は、短期間であれば問題になりませんが、それが何年も続くと、顎の筋肉や首、肩の筋肉に慢性的な緊張が生じることがあります。
例えば、スウェーデン・ヨーテボリ大学の研究では、顎関節症と頭痛、頸部痛、肩こりとの関連が示されています。
これは、噛み合わせが悪いと必ず肩がこる、という単純な因果関係ではなく、体がバランスを取ろうとした結果、他の部位に負担が移るという考え方なのです。
歯周病は、口の中だけの病気ではない

歯と体の関係で、もっとも研究が進んでいる分野の一つが歯周病といわれています。
歯周病は、歯ぐきの炎症だけでなく、慢性的な炎症が全身に影響を与える可能性があることが知られています。
アメリカのハーバード大学公衆衛生大学院や、ロンドン大学などの研究では、歯周病と心血管疾患、糖尿病のコントロール不良、早産や低体重児出産、全身の炎症反応の亢進との関連が報告されています。
ここで重要なのは、歯周病が直接病気を起こすというより、慢性的な炎症が、体の負担を増やす一因になるという点にあります。
体調不良が続いている人ほど、炎症に対する耐性が低下している場合もあり、口腔内の状態が影響しやすくなるわけです。
噛めないことは、栄養と自律神経にも影響

噛みにくさは、食事内容にも影響します。
硬いものを避け、柔らかいもの中心になると、食物繊維やたんぱく質の摂取量が偏りやすくなります。
また、よく噛めない状態が続くと、食事そのものがストレスになることもあります。
日本の大学、例えば、東京医科歯科大学などの研究では、咀嚼回数や咀嚼機能と、自律神経活動との関連が示唆されています。
噛むというリズム運動は、副交感神経を刺激し、体を落ち着かせる方向に働くことがあると考えられているわけです。
つまり、そうなると噛めないことは、栄養面だけでなく、神経系のバランスにも影響し得るということになります。
歯が原因で体調不良になる、と考えるのは早計?

ここで一つ、非常に大切な注意点があります。
体調不良の原因を、歯や噛み合わせだけだと考えるのは、適切ではないということです。
体調不良の多くは、睡眠、食事、運動、ストレス、ホルモン、持病など、複数の要因が重なって生じます。
歯は、その中の一要素にすぎません。
しかし、体というシステムの中で、歯が足を引っ張っている状態が存在することも、否定できないのです。
たとえば、他の要因を整えても体調が改善しにくいとき、口腔内の炎症や噛み合わせの問題が、回復を妨げている可能性はあります。
大切なのは原因探しより、負担を減らすこと。

体調不良の原因は歯ですか?
と聞かれたとき、正確に答えるなら、原因の一つになっている可能性はある、というのが回答です。
歯科医療で目指すべきなのは、歯が原因だと証明することではなく、体にとって余計な負担を減らすことなのです。
そのためには、慢性的な炎症を減らすことや、無理な噛み方を減らすこと、力を逃がす噛み合わせの設計にすることや、清掃しやすい環境を作るという、こうした積み重ねが、体調を立て直す土台になることがあるのです。
最後に

歯は、体調不良の犯人ではないかもしれませんが、ただ、共犯者になっている可能性はあります。
体はとても賢く、多少の問題があっても、なんとか補いながら機能します。
ただ、その補正が長く続くと、どこかで無理が表に出ることがあります。
歯や噛み合わせを整えることは、体を一気に治す魔法のようなものではありません。
ただ、体が回復しやすい状態を取り戻すための、静かな下支えにはなり得ることは確かです。
体調不良を感じているとき、歯のことを一度立ち止まって見直してみること。
それは、決して突飛な考えではなく、今の医学が少しずつ認め始めている新しい視点なのです。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Harvard T.H. Chan School of Public Health
Oral Health and Systemic Health - University College London (UCL)
Periodontal disease and systemic inflammation - University of Gothenburg
Temporomandibular disorders and musculoskeletal pain - Tokyo Medical and Dental University
Masticatory function and autonomic nervous system activity - Trulsson M.
Sensory-motor function of periodontal mechanoreceptors
Karolinska Institute - Preshaw PM et al.
Periodontitis and diabetes: a two-way relationship
University of Birmingham
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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