マスクと歯周病リスク
2026年3月31日
結論 をいいます
マスクによる口呼吸が、歯周病リスクを高めます
マスクそのものが歯周病を直接引き起こすわけではありません。
しかし、マスクの着用によって呼吸がしづらくなり、鼻呼吸が妨げられることで口呼吸が増える傾向が強まるのです。
口呼吸は口腔内の乾燥を招き、唾液の防御機能を低下させてしまいます。唾液が減少すれば、歯垢というプラークが溜まりやすくなり、歯ぐきに炎症を引き起こす細菌が増殖してきます。
その結果、歯肉炎や歯周病が進行しやすい状態になるのです。国内外の大学による複数の研究は、このマスクから口呼吸 となり、それが乾燥 を引き起こして、 炎症が慢性化するという一連の流れを裏づけるデータを示しています。
はじめに
新型コロナウイルスの流行以降、マスクの認知ご今まで以上に上がり、社会生活に欠かせない存在となりました。
感染予防には確かな効果がありますが、息苦しい、口が渇く、歯ぐきが腫れやすくなった、といった声が自然と増えています。
こうした変化の背景には、マスクによる呼吸の変化が関与している可能性があるのです。。特に、口呼吸が増えることによって唾液分泌が減少し、口腔内の自浄作用が弱まることで、歯周病リスクが上昇する、という点が、国内外の研究で注目されています。
マスクの呼吸への影響
マスクを装着すると、呼気がこもって、二酸化炭素濃度がわずかに上昇します。
これは、呼吸時の抵抗を増やして、息苦しさ、酸素不足感を感じさせる要因になります。この感覚的なストレスによって、無意識のうちに鼻呼吸から口呼吸へと切り替わる人が増えることが指摘されているのです。特にN95やFFP2など密着性の高いマスクでは、その傾向が強く現れます。
口呼吸と乾燥
口呼吸を続けると、外気が加湿されないまま口腔内に流れ込みます。これはまるで扇風機の前で口を開けているような状態で、唾液が蒸発しやすくなり、乾燥がどんどん進みます。
唾液は細菌を洗い流す自浄作用、酸を中和する緩衝作用、歯や歯ぐきを守る抗菌作用を持つ、口腔の防御の要なのです。
乾燥によって唾液が減少すると、歯垢が蓄積しやすくなり、細菌の繁殖を抑える力が弱まってきます。そうなることで、歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯周病といった問題が起こりやすくなるのです。
成長期の影響
2024年に新潟大学、日本大学、東京医科歯科大学の共同研究チームが発表した論文(Nature Scientific Reports)では、思春期の若者を対象に呼吸様式と口腔機能の関連を調査しました。
その結果、口呼吸の習慣がある子どもでは、舌の圧力が弱く、唇を閉じる力も低く、咀嚼の効率も劣っていることが明らかになりました。これらの機能低下は、口腔内の衛生維持を難しくし、将来的に歯周病リスクを高める可能性があります。
つまり、成長期における口呼吸の癖が、成人期以降の歯や歯ぐきの健康に長期的な影響を及ぼす可能性を示したことになります。
顎の発達と歯周病リスク
2022年、イギリスのマンチェスター大学と中国の武漢大学の研究チームが共同で発表した論文(Frontiers in Public Health)は、子どもの口呼吸が 顎や顔の骨格発達に悪影響を与え、歯列の乱れ、歯周病のリスクを高めると報告しました。
特に、呼吸の25〜30%以上を口呼吸に依存する場合、口腔内のpHバランスが崩れ、唾液の防御作用が低下し、歯肉炎の発症率が顕著に上がるとされています。
この研究は、口呼吸が長期的な疾患リスク要因であることを国際的に示したことになります。
北海道大学による臨床的証拠
2017年、北海道大学歯学部の研究グループは、慢性的な口呼吸をする歯周炎患者を対象に、夜間にオーラルスクリーンやリップシールテープという口呼吸改善のための補助装置を使用する試験を30日間行いました。
その結果、歯ぐきの炎症が改善して、プラーク付着量が減少し、さらに口臭や乾燥感などの自覚症状も軽減しました。
これは口呼吸を防ぐことで歯周病が改善するという因果関係を臨床的に裏づけた貴重なデータであり、呼吸様式の改善が歯周病治療の新たな補助的アプローチになる可能性を示しています。
マスクと歯周病
これらの研究を総合すると、マスクが直接的に歯周病を引き起こすわけではありませんが、マスク着用による呼吸の変化が口腔環境に影響を及ぼすことは明らかです。
マスクによって鼻呼吸が妨げられる → 口呼吸が増える → 唾液が減少し乾燥が進む → 細菌が増殖しやすくなる → 歯ぐきに炎症が起きる、という一連の流れです。
特に、鼻炎、アレルギー体質、もともと口呼吸の傾向がある人では、その影響がより強く現れると考えられます。
まとめとして
マスクは感染予防のために有効な一面もありますが、その影響として歯周病のリスクが上がる可能性があります。
そのため、マスクを使用するときは、鼻呼吸を意識的に保つことが重要となります。鼻炎やアレルギーがある人は早急に適切な治療を受けて、マスク着用時も口を閉じる習慣を意識することがオススメです。
さらに、こまめな水分補給や、唾液分泌を促すガム、保湿ジェルの活用も効果的が期待できるでしょう。
歯磨き、フロス、舌の清掃などの基本的な口腔ケアを徹底して、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることで、マスク生活による口腔トラブルを最小限に抑えることができます。
マスクを日常的に使用するのであれば、呼吸と唾液のバランスに配慮することが、歯と歯ぐきを守る新しい時代の健康習慣といえると思います。
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Masutomi Y., Goto T., Ichikawa T. Mouth breathing reduces oral function in adolescence. Nature Scientific Reports, 2024(新潟大学・日本大学・東京医科歯科大学, 日本)
- Xiang J., McGrath C., Gu M. et al. The impact of mouth breathing on dentofacial development: A concise review. Frontiers in Public Health, 2022(マンチェスター大学, 英国/武漢大学, 中国)
- 北海道大学. 口呼吸の歯周組織におよぼす影響に関する研究(The Effect of Oral Screen and Lip-Seal Tape on the Gingiva in Mouth Breathers). 北海道大学歯学部研究報告, 2017
この記事は
医療法人社団 聖和厚生会
ウエスト歯科クリニック/玉川中央歯科クリニック
統括院長
Dr. Ryo が執筆しました。
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