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アメリカ人と日本人、どちらが虫歯になりやすいのか

2026年1月2日

こんにちは、ドクターリヨウです。論文で学ぶシリーズ、今回のテーマはこちらです。

アメリカ人と日本人、どちらが虫歯になりやすいのか

ー文化と生活習慣から考えるー

う蝕と呼ばれる虫歯う蝕は、甘いものを食べすぎたからできるだけでなく、その国の文化や暮らし方によって反映されると考えられます。

つまひ、どれだけ砂糖を摂るか、どんなタイミングで食べるか、歯医者は痛くなってから行くのか、予防のために行くのか?

それらの文化的な違いが積み重なることで、国民全体の虫歯リスクを決めているのです。

アメリカと日本を比べると、食文化、医療制度、フッ化物の利用、歯への意識など、色々な面で異なることがあります。

その違いを検証すると、アメリカ人より日本人は虫歯になりやすい、という結論になります。

ただし、繰り返しになりますが、その傾向は、遺伝や体質の問題ではなく、文化や制度の違いによるものです。

アメリカは見せる歯、日本は治す歯

アメリカでは、歯は健康と成功の象徴というイメージがあると思います。

白く整った歯並びは清潔感と自己管理能力を示すもので、ビジネスや社交の場ではイメージを良くするために重要な要素になります。

そのため、アメリカでは多くの人が半年ごとに定期クリーニングを受けて、虫歯になる前に予防するのが常識であり、アメリカ歯科医師会(ADA)の調査では、成人の約80%が定期検診を受けているといわれています。

日本はどうでしょうか?

歯医者は痛くなったら行く場所というイメージがまだまだ根強いのではないでしょうか?

どちらというと、予防よりも治療がメインで、健診やクリーニングを習慣的に受ける人は少ないのです。 厚生労働省の調査では、半年以内に歯科を受診した人はわずか35%ほどと報告させています。

この2つの国の違いを一言でいいのであへば、アメリカは、見せる歯の文化、日本は治す歯の文化、ということになると思います。

アメリカは、社会的イメージを守るための予防、日本は健康を維持するための治療ということです。

どちらも歯を大切にしているのですが、目的と通院のタイミングがまるで異なるのです。

フッ素文化の差

虫歯予防といえば、フッ素と思いつく人もいると思います。

アメリカでは、1945年から水道水へのフッ化物添加が始まって、いまでは国民の約7割がフッ素が添加されている水を利用しています(CDC, 2023)。

フッ化物は歯の再石灰化を助けて、酸に溶けにくい歯質を作ります。この効果は、虫歯発生率を25〜40%も減らすといわれています。

一方、日本では水道水にフッ素天添加は行われていません。

戦後の法制度、フッ素に対する安全性への不安、化学物質への不安、という文化的背景ががあるからです。

そのかわりなのか、フッ素入り歯磨き粉の使用や、学校でのフッ素洗口の推奨など、していますが、地域ごとの差が大きくて、全国的な予防効果は限定的といえます。

2024年のBMC Public Healthの研究では、学校単位でフッ素洗口を行っている自治体は、12歳児の虫歯の数が明らかに少ないことが示されています。

しかし、導入率は地域によってまちまちになっており、国の制度としてフッ素を使うアメリカと、個人の選択による日本。この構造的な違いが、虫歯リスクの差を生み出していると考えられます。

食文化の違い

実は、砂糖の摂取量自体はアメリカの方が多いのです。一人あたり1日約100グラムの砂糖を摂取しており、日本人の約60グラムを大きく上回っています(FAO, 2023)。

にもかかわらず、う蝕の発症率はアメリカの方が高いわけではないのです。

この理由は、摂取頻度の違いであると思われます。

WHO(2015)の報告では、虫歯は砂糖の量よりも回数に影響するのです。

アメリカでは、甘いものは食後のデザートとしてまとめて摂ることが多く、それ以外は水やコーヒーで済ませる人が多いのに対して、日本では、だらだら食べる文化として根づいています。

仕事中のお菓子、午後の菓子パン、夜のアイスなどなど、アメリカと比べると少量なのですが、何度も糖を口にすることになるので、口の中が酸性状態に保たれる時間が慢性的に長くなるのです。

1954年のスウェーデンのヴィペホルム実験では、砂糖の摂取回数が多いほど虫歯が増えることを示しています。

この研究でも、間食習慣が虫歯リスクを高めているといえるのです。

社会制度とライフスタイル

アメリカでは、歯は個人の印象やキャリアにも直結するといわれています。

白い歯は清潔感、誠実さ、自己管理能力の象徴であり、矯正やホワイトニングは人生の投資として広く認知されています。

そのため、子どもの頃から歯列矯正を行うのは中流層の常識であり、定期的な歯のメンテナンスは社会人のマナーという位置付けになっています。

それに対して、日本では歯の見た目よりも、使えるかどうかという機能が重視されます。

公的な医療保険で保険治療が安価に受けられるため、歯科は歯を治す場所として認識されているのです。

保険の制度的にも、予防よりも治療が優先されており、定期健診や審美的なケアは自己負担が多いのが現実です。

この違いが、予防意識と行動の差として現れると推測されます。

アメリカ人が虫歯ができない努力をするのに対して、日本人はできた虫歯を治すのです。

結果として、統計上のう蝕発症率や治療歯率は日本がアメリカよりも高めに出やすいのです。

医療制度と所得格差

アメリカでは、日本よりも歯科医療費が非常に高額なため、低所得層では未治療の虫歯が多いのも現実です。

2018年のJAMA Pediatricsの研究によれば、所得が低いほど未治療う蝕率が高いため、水道水へのフッ素添加が、その格差を緩和する可能性が指摘されています。

それに対して、日本では保険制度が整っているため、治療のハードル自体は低いのですが、予防への投資意識がまだ十分に育っていません。

この差は、文化として根づいた社会構造の反映ともいえそうです。

低所得層の子どもを対象とした日米韓の比較研究(2022)をみてみると、アメリカと日本、双方に“虫歯になる社会的格差が存在するのですが、予防の手厚さがリスク差を縮める可能性があると報告されています。

統計が示す現実

WHOの「Global Oral Health Report(2023)」によると、12歳児の平均DMFT指数(虫歯・喪失・充填歯の合計)は、アメリカは 1.3、日本は 2.0前後です。

これは、アメリカの方が虫歯経験が少ないことを示しています。

成人を含む全体傾向でも、アメリカのう蝕経験率は過去30年で減少しているのですが、日本は緩やかな下降ながら依然として高いのが現状となります。

理由としては、制度的な予防の有無、社会的な歯科に対する意識、食習慣などが、数字の差として表れているのです。

まとめとして

アメリカ人より日本人のほうが虫歯になりやすい。ただ、その原因は体質や遺伝ではなく、フッ化物利用制度の差や、予防意識の違い、間食文化、歯科医療制度と社会的価値観の差といった文化的・制度的な問題が背景にあるのです。

ただ、日本でも、学校や地域レベルでのフッ素洗口や、定期健診の習慣化、食文化の改善が進めば、アメリカと同水準の虫歯予防が可能になると考えられます。

歯を治す文化から、歯を守る文化へ。

日本における、改善すべき課題の一つであると思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この国別のシリーズを今後もいくつかご紹介します。歯からみた、外国との違いを考察することで、より外国の文化の理解が深まり、両国にプラスの効果がでることを期待しております。

統括院長 Dr.Ryo

※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。

参考文献(引用一覧)

  1. Centers for Disease Control and Prevention (2023). Community Water Fluoridation Data & Statistics. CDC.
  2. World Health Organization (2023). Global Oral Health Status Report. Geneva: WHO.
  3. American Dental Association (2022). Oral Health and Preventive Care Survey.
  4. Matsumoto, H. et al. (2024). School-based fluoride mouth rinse program and oral health of children in Japan. BMC Public Health, 24:18156.
  5. Moynihan, P. & Kelly, S. (2015). Effect of frequency of sugar intake on dental caries. WHO Technical Report Series.
  6. Vipeholm Dental Caries Study Group (1954). The Vipeholm Studies. Acta Odontologica Scandinavica.
  7. JAMA Pediatrics (2018). Association Between Water Fluoridation and Income-Related Inequalities in Dental Caries.
  8. Li, Z. et al. (2025). Global burden of dental caries, 1990–2021. BMC Oral Health.
  9. FAO (2023). Food Balance Sheets: Sugar Consumption Data.
  10. Comparative Oral Health Study Group (2022). Dental Caries in Low-Income Children: U.S., Korea, Japan. International Dental Journal, 72(4):1020.
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