長生きするには、噛み合わせ
2025年12月23日
みなさん、こんにちは。Dr.Ryoです。今回の 論文で学ぶシリーズ、テーマはこちらです。
長生きするには、噛み合わせ
寿命を左右するのは、噛み合わせ
長生きするために必要なものとして、バランスの取れた食事、運動習慣、質の良い睡眠、がよくいわれますよね。しかし、ご存じでしょうか?。近年、噛み合わせが寿命に直結する重大な要因であることが、歯科医学、老年医学の双方から次々と示されているのです。
噛み合わせとは歯と歯の接触ではありません。咀嚼機能、顎関節の安定、筋肉や姿勢との協調、脳血流にまで関わるのです。噛み合わせが安定している人はよく噛んで食べられ、栄養状態がよく、認知症リスクが下がるだけでなく、転倒や寝たきりを防げるのですが、歯がないとか、不安定なら噛み合わせを放置すれば、老化が加速することが明らかになってきています。
咀嚼機能と健康寿命
栄養摂取への影響
噛み合わせが良いこと、つまり、しっかり噛めることは消化吸収の第一歩になります。物を粉砕する咀嚼によって、食物は細かく砕かれて、唾液酵素が作用しやすくなることから、胃腸の負担も軽減するのです。ただ、反対に、噛み合わせが悪くなると、丸呑み、片噛み、が増えて、栄養吸収効率が落ちるわけです。特に高齢者にとっては、低栄養や、筋肉量の減少するサルコペニアに直結して、健康寿命を縮める要因となるのです。
日本大学の全国5,000人を対象とした調査では、さきいか、たくあんなどの固い食べ物を噛める、と答えた高齢者ほど健康余命が長いことが示されました。
脳の活性化
物を粉砕する咀嚼運動は脳の記憶をつかさ海馬を刺激して、記憶や認知機能を保つことができるのです。実は、よく噛む人ほど認知症発症率が低い、という疫学データが蓄積されています。
歯の喪失と死亡リスク
大阪大学のレビューでは、歯の本数が多いほど長寿と関連することが報告されています。その理由は、歯を失うと野菜や食物繊維の摂取が減って、心血管疾患のリスクが高まるためと考えられています。
また、10年間にわたる高齢者コホート研究では、歯の喪失を経験した人は、歯が全部ある人に比べて、高血圧や糖尿病を発症しやすいことが示されています。これは、歯の健康、が、全身の健康寿命、を左右する具体的な証拠であるといえます。
入れ歯と咀嚼機能の回復
入れ歯の効果
日本補綴歯科学会の報告では、入れ歯を正しく装着した高齢者は、唾液分泌や免疫機能が改善して、歩行速度やバランスが向上したことが示されています。要介護高齢者では、体重が回復して、転倒リスクの減少が確認されています。
咬合支持の重要性
臼歯が抜けて、放置することで、不安定なら噛み合わせになると、最大咬合力や舌圧が有意に低下することが明らかになっています。臼歯部を入れ歯やブリッジ、インプラントなどで歯科治療を行うと、物を粉砕する咀嚼機能は大幅に改善するのです。
咀嚼機能と生活習慣病
咀嚼能率の低下は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病リスクを高めることがわかっています。咀嚼能力の低い人は高血圧の罹患率が高くて、身長と体重から肥満度をはかるBMIの低下や低栄養にもつながることが複数の研究で報告されているのです。
また、システマティックレビューでは、咀嚼機能はフレイルや、加齢や病気、栄養不足などによって筋肉量や筋力が低下するサルコペニアを予測する指標になり得る、と総括されており、噛み合わせの維持が健康長寿に不可欠であることを裏付けています。
症例と臨床から
- ケース1:歯が全く無い患者さんに、総入れ歯を装着したところ
食欲不振で体重減少していた80代女性は、食欲が回復し体重が2kg増加。免疫状態も向上 - ケース2:片側で物を噛む癖から体のゆがみのあった50代男性、左側でしか噛めず慢性的な腰痛を訴えていた。噛み合わせの調整と入れ歯治療を行った結果、姿勢が安定して、腰痛が軽減。
- ケース3:物を粉砕する咀嚼改善による認知機能維持
軽度認知障害(MCI)の患者において入れ歯装着後、記憶検査の成績が改善。脳の血液の流れを画像で可視化する検査 である、脳血流シンチでも海馬領域の血流増加が確認されました
結論として
噛み合わせは、栄養、免疫、姿勢、認知、運動能力など全身の健康を支える基礎の部分であり、わずかな噛み合わせの乱れが老化を加速するが、反対に整えると健康寿命を延ばせる可能性が高くなるわけです。
ウエスト歯科クリニック、玉川中央歯科クリニックでは、噛み合わせと、全身の健康をつなぐ独自のアプローチを重視しています。特に、トータルヘルスケアプログラム® では、単なる歯科治療を超えて、身体全体の機能を包括的に評価・改善する仕組みを導入していますから、噛み合わせから始める健康づくりに関心のある方は、一度ご相談いただきたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今までにない、全く新しいアプローチに驚かれた方もいらっしゃると思います。
みなさんや、みなさんのご家族、ご友人にとって、お役に立てる情報を引き続き提供してまいります。
統括院長 Dr.Ryo
参考文献・引用
- 日本大学 5,000人縦断調査:固い食品を噛める人ほど健康余命が長い【J-STAGE】
- 大阪大学 文献レビュー:歯数と長寿の関連【J-STAGE】
- 10年コホート研究:歯の喪失と生活習慣病リスク【CIR NII】
- 日本補綴歯科学会:義歯装着による歩行・免疫・体重改善の報告【hotetsu.com】
- 高齢者研究:咬合支持と咀嚼能率・咬合力・舌圧との関連【J-STAGE】
- システマティックレビュー:咀嚼機能はフレイル・サルコペニア予測因子【ScienceDirect】
- 6年縦断研究:咬合支持喪失と咀嚼効率低下の相関【Nature Research Intelligence】
※本コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。


