科学的根拠に基づく、虫歯にならない方法
2025年12月2日
みなさんこんにちは、ドクターリヨウです。
今回のテーマはこちらです。
科学的根拠に基づく、虫歯にならない方法
虫歯は、世界中で最も一般的な慢性疾患の一つであり、WHOも口腔疾患の公衆衛生上の負担を強調しています。
日本では子どもの虫歯は減少傾向にありますが、成人や高齢者における根面う蝕、つまり、歯の根の付け根にある虫歯の増加が問題視されています(厚生労働省, 2023)。
虫歯は、甘いものを食べたから発生するのではなく、細菌、食事、歯質、唾液、時間の複合的要因で発症します。そのため、虫歯にならない方法は、何かひとつだけの対策ではなく、生活全体を通した包括的な戦略が必要になるのです。
う蝕発症のメカニズム
細菌の役割として
虫歯は主に ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans) と ラクトバチルス属 による酸産生と、歯の脱灰によって進行します(Loesche, 1986)。
バイオフィルムと言われるプラークが作られると、酸がエナメル質のカルシウムとリン酸を溶解して、象牙質まで進行してくるのです。
脱灰と再石灰化
歯は常に、脱灰、再石灰化、を繰り返しています。実は、唾液中のカルシウム・リン酸・フッ化物が再石灰化を助けるため、唾液分泌量やその性状は重要なのです(Featherstone, 2000)。
虫歯を防ぐため
虫歯リスクにおいて重要なのは、糖分の量、より、摂取頻度、です。スウェーデンのヴァイプホルム研究(Vipeholm Study, 1953)では、砂糖を食事の時に摂るより、キャンディを頻回に間食する方が圧倒的にう蝕を増やすこと示しました。
キシリトールはミュータンス菌の酸産生を抑制して、唾液の分泌を促進するため、予防効果が確認されています(Maguire & Rugg-Gunn, 2003)。ただし、万能、ではないので、歯磨きやフッ化物応用と併用するこもを推奨します。
食後は、水やお茶を飲むことで口の中を洗い流すとか、ダラダラ食べを避けて、食事の間隔を空ける。また、硬い野菜やチーズなどを取り入れ、咀嚼と唾液分泌を促すことも大切です。
プラークコントロールとフッ化物応用
歯ブラシだけではプラーク除去率は約60%にとどまるといわれています(Löe, 1970)。そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することが重要です。
フッ化物は再石灰化を促して、耐酸性の高いフルオロアパタイトを形成します。WHOもフッ化物応用を最も有効かつコスト効果の高い予防手段と位置づけています(WHO, 2017)。
唾液とライフスタイル
唾液は緩衝作用、抗菌作用、再石灰化促進作用を持つます。そのため、唾液分泌の低下は虫歯リスクを大幅に高めます(Navazesh & Kumar, 2008)。
生活習慣と唾液
十分な水分を摂取して、喫煙は唾液腺機能を低下させることから禁煙をすることも大切です。さらに、ガム、繊維質食品をとることで適度な咀嚼をして、交感神経支配になると唾液量が減少することからストレス管理もおこなうのが良いと思います
歯科医院での定期管理
自己管理だけでは限界があるため、定期的な歯科受診も必要です。
実践の工夫
予防法を、完璧に実行することは難しいと思います。むしろ、多少の実行のバラツキを許容しながら継続できる工夫が重要です。
例えば、甘いものを食べても、その後に必ず水を飲む、1日2回の歯磨きだけは必ず守る、をというスタンスで、ストレスなく長期的に続けられることがよいのです。
これは行動科学的にも、習慣化、の成功要因とされます(Lally et al., 2010)。
まとめ
虫歯にならないためには、
- 糖の摂取頻度をコントロール
- キシリトールや代替甘味料を賢く使う
- フッ化物入り歯磨剤を習慣化
- 唾液分泌を保つ生活を意識
- 定期的に歯科医院で専門的管理
このような複合的なアプローチが必要なのです。
完璧でなくても、ある意味、適当さ、を持たせて続けることが、最も効果的な、虫歯にならない方法、といえます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
みなさんの日常にお役に立てるようであれば幸いです。
統括院長 Dr.R.Ryo
コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献(一部)
- Loesche WJ. Role of Streptococcus mutans in human dental decay. Microbiol Rev. 1986.
- Featherstone JD. The science and practice of caries prevention. J Am Dent Assoc. 2000.
- Vipeholm Dental Caries Study. Acta Odontol Scand. 1953.
- Maguire A, Rugg-Gunn AJ. Xylitol and caries prevention. Br Dent J. 2003.
- Navazesh M, Kumar SK. Xerostomia: prevalence, diagnosis, and management. Compend Contin Educ Dent. 2008.
- Guideline: Sugars intake for adults and children. 2015.
- Lally P, van Jaarsveld CH, Potts HW, Wardle J. How are habits formed. Eur J Soc Psychol. 2010.


