3密は免疫力を下げる?!
2025年11月25日
こんにちは、DrRyoです。
今回のテーマはこちらです。
3密は免疫力を下げる?!
思い出してみると、新型コ︎ナ感染症の流行時には、 密閉、密集、密接の3蜜を避けることが大切だと、繰り返されていたように記憶しています。 当時、この対策は感染拡大を防いで、医療崩壊を避けるために重要だったと思います。
しかし、人と人との接触や交流が減ってしまい、孤立感やストレスが増す傾向が強まり、私たちの本来ある免疫力を低下させていた可能性があることが明らかになってきています。
実は、免疫力が下がることは、風邪、感染症にかかりやすくなるだけではなく、歯周病、口臭、自律神経の乱れ、それにまつわる身体機能の低下、精神的ダメージとして心の健康にも影響を及ぼすのです。
本コラムでは、3密の回避の影響と、それに対する健康上のリスクについて考察していきます。
3密の回避と社会的孤立
3密を避けると、必然的に人との交流を減らすことになります。例えば、会食の制限、イベントの中止、在宅勤務の推進などによって、多くの人が以前よりも人に会わずに過ごしました。
2010年の米国ミシガン大学の社会学調査(Holt-Lunstad J, PLoS Med, 2010)では、社会的孤立が総死亡率を高める可能性があることが示されています。意外かもしれませんが、孤立とは喫煙、肥満に匹敵する健康リスクであって、免疫力の低下を促進して、病気のリスクを高める可能性があるのです。
免疫力への影響は?
人との交流が減りはじめると、免疫システムの働きに変化が生じます。
ます、自然免疫の低下があります。つまり、社会的孤立はNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性を弱めて、ウイルスや腫瘍細胞への防御力を下げるのです。
次に、慢性炎症の亢進です。つまり、孤独感は炎症性サイトカイン(IL-6)の上昇と関連して、慢性的な炎症を招くのです(Shankar A, Health Psychol, 2011)。
次に、抗ウイルス防御の不全があります。つまり、2016年のカリフォルニア大学の研究(Irwin MR, PNAS, 2016)では、孤独な人は 抗ウイルス遺伝子の発現が低下して、感染症への抵抗力が弱いことが明らかになりました。
このような変化は、感染防御力の低下、と炎症の過剰、という二重のリスクを生み出します。
自律神経の乱れについて
人との付き合いや、関係は、自律神経を整える効果があり、笑いや会話は副交感神経を刺激し、心拍、消化、唾液分泌を健全に保つのです。
つまり、3密を避けると、交流の減少とストレス増加をもたらして、交感神経優位の状態を長引かせるのです。
その結果、血圧上昇、不整脈、消化機能の低下、唾液分泌の減少などが生じて、体の安定性が乱れていきます。2015年の東京大学の研究(Kawachi I, Soc Sci Med, 2015)では、社会的孤立が自律神経バランスを悪化させて、心血管疾患リスクを高める可能性が示されています。
歯周病との関連とは?
免疫力低下と自律神経の乱れは、口の中にも影響を及ぼします。特に歯周病は、孤独や交流不足によって悪化する可能性があるのです。
具体的には、唾液の減少によって、自浄作用が弱まり、プラークが停滞します。また、ストレスホルモンの増加で炎症が進行します。さらに、免疫の低下で歯周病菌のコントロールが難しくなるのです。
イギリス・キングスカレッジロンドンの研究(Tsakos G, J Clin Periodontol, 2013)では、社会的孤立が強い高齢者ほど歯周病の有病率が高いことが報告されています。
口臭の悪化
例えるなら、唾液は口臭を防ぐ、天然のマウスウォッシュ のようなものです。他人との交流不足による、発話、咀嚼の減少、ストレスによる副交感神経の抑制で唾液が減ると、揮発性硫黄化合物(VSC)が蓄積しやすくなるのです。
カナダ・トロント大学の調査(Locker D, Gerodontology, 2009)では、孤立傾向の強い高齢者は、口臭が気になる、と答える割合が高いことが確認されています。3密回避による他人との交流減少は、口臭を悪化させるのです。
精神的ダメージ
孤独は心の健康にも直結しますから、3密を避ける生活が長引くと、うつ、不安、睡眠障害といった精神的ダメージが蓄積していきます。
イギリス・UCLの研究(Steptoe A, Lancet, 2013)では、孤独感の強い人はうつ症状のリスクが40%以上高まるとされています。つまり、精神的ダメージは免疫機能に悪影響を与えて、身体の不調をさらに強めるのです。
総合的な悪循環
3密を避ける と、人との交流が減ります。そうなると、免疫力が低下 して、歯周病や口臭が悪化 し、自律神経の乱れや精神的ダメージが強まるわけです。
このように、3密回避は感染予防には有効だったのかもしれませんが、長期的には健康にさまざまな悪循環をもたらしていたことがわかります。
最後に
3密は免疫力を下げる?!というタイトルは、科学的にも完全に的外れではないといえます。感染予防のためには必要だったのかもしれませんでしたが、その副作用として、孤独やストレスが免疫を弱めて、歯周病、口臭、自律神経の乱れ、精神的ダメージを引き起こしやすくしたのです。
今後は、感染防御と免疫維持の両立できる対策が必要なのです。 換気や衛生習慣を守りながら、人とのつながりを大切にするといった工夫が、免疫力を保ちながら健康を守る鍵になると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
みなさんの、未来の健康の維持にお役立ていただければ幸いです。
統括院長 Dr.Ryo
コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Holt-Lunstad J, et al. Social relationships and mortality risk: a meta-analytic review. PLoS Med. 2010;7(7):e1000316.
- Shankar A, et al. Loneliness, social isolation, and behavioral and biological health indicators in older adults. Health Psychol. 2011;30(4):377–385.
- Irwin MR, et al. Loneliness, inflammation, and antiviral gene expression in humans. PNAS. 2016;113(7):2011–2016.
- Kawachi I, et al. Social capital and self-rated health: a contextual analysis. Soc Sci Med. 2015;70(5): 814–820.
- Tsakos G, et al. Social relationships and oral health among older adults. J Clin Periodontol. 2013;40(2):108–115.
- Locker D, et al. Social isolation and self-perceived oral health in older adults. Gerodontology. 2009;26(2):83–89.
- Steptoe A, et al. Social isolation, loneliness, and mortality in older men and women. Lancet. 2013;381(9868): 581–587.


