なぜ、矯正すると精神的に不安定になるのか?
2025年11月21日
みなさん、こんにちは。統括院長Dr.Ryoです。今回のテーマはこちらです。
なぜ、矯正すると精神的に不安定になるのか?
矯正と心
矯正は、歯並びや噛み合わせを整えることで、見た目や咀嚼機能を改善するための大切な治療です。
しかし、マイナスの面あって、矯正中に気持ちが落ち着かない、不安感が強まった、イライラしやすい、と訴える人も少なくないのも現実です。
矯正すると、精神が不安定になる人があるのはなぜなのか?
実は、その要因は、心理的ストレスだけでなく、複雑な要因が潜んでいます。
噛み合わせと自律神経
噛み合わせは、自律神経の働きと密接につながっています。
ミシガン大学の研究では、噛み合わせを変えることで交感神経活動が一時的に高まって、不安や緊張感が増すことがあるとされています【University of Michigan, 2013】。
京都大学の実験では、噛み合わせの不安定さを人工的に作ると、脳波に変化が生じて、リラックスを示すα波が減少することが観察されました【Kyoto University, 2014】。
矯正中は歯の位置が少しずつ変化するため、噛み合わせが安定しない時期が生じます。不安定な噛み合わせは、自律神経を乱して、精神的な不安定さとして表れやすくなります。
脳血流の変化
奥歯の噛み合わせは、脳血流にも影響を及ぼすことがわかっています。
ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(UCL)の研究では、物を粉砕する咀嚼が脳の前頭葉の血流を増加させて、注意力や感情コントロールに影響することが示されています【UCL, 2016】。
ということは、矯正によって噛み合わせが、一時的に不安定になると、この脳血流のリズムが乱れて、感情の揺れや集中力低下が起こりやすくなります。
筋肉と姿勢
矯正中は歯の位置の変化に合わせて顎の周囲の筋肉が再適応していくことから、全身のバランスも少しずつ変わっていきます。
大阪大学の調査では、噛み合わせの乱れが頸部、肩の筋緊張を高めて、交感神経を過剰に刺激することが明らかになりました【Osaka University, 2015】。このことは、姿勢の変化が脊髄神経から、自律神経系に影響する可能性も示されています。
つまり、矯正による歯の動きが、全身の筋肉や姿勢を変化させて、精神的な不安定さを生じさせる場合があるのです。
ホルモンとストレス
矯正治療は長期間にわたり、装置の違和感や痛みが伴うことがあります。
これがストレスとして体に作用すると、ホルモンバランスに影響がでてきます。
ハーバード大学医学部の研究では、慢性的な口の中のの不快感がストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加させて、情緒不安定や不眠につながることが確認されてました【Harvard Medical School, 2012】。
さらに、長期的なストレスはセロトニンやドーパミンの働きを阻害して、抑うつ傾向を強める要因となることがわかっています。
社会心理的
精神的な不安定さは、身体的要因と心理的な側面があります。
具体的には、見た目の変化に対する不安や、装置の痛みや違和感によるストレス、食事や会話の制限から生じる生活の不自由さ、などです。
コーネル大学の心理学研究では、長期的な治療ストレスが自己肯定感を低下させて、感情の揺れを引き起こすと報告されています【Cornell University, 2014】。
歯科からできるサポート
歯科領域からできることもあります。例えば、噛み合わせを専門とする歯科医師に、噛み合わせの微調整をするとか、装置による不快感をできるだけ減らすようにするとか、睡眠やリラックスを促すアドバイスを併用するとかです。
さらに、歯科と心療内科や内科が連携することで、患者さんの心身両面の負担を軽減できる可能性も考えられます。
トータルヘルスケア的視点
矯正による精神の不安定さは、口の中だけの問題ではありません。
噛み合わせ、筋肉、姿勢、自律神経、ホルモン、ストレスなどなど。それらが複合的に現れる現象です。
そのため、治療の成功のためには 全身の健康と心の安定を考慮した包括的な視点 が欠かせませんのです。
最後に
矯正を受けた人が、気分が落ち込みやすくなったり、イライラすることは、決して珍しいことではありません。
その原因には、噛み合わせの不安定さ、自律神経や脳血流の乱れ、筋肉と姿勢の変化、ストレスホルモン、心理的要因が複雑に絡んだことで引き起こされるのです。
つまり、矯正中の精神の不安定は、体が変化している証拠みたいなものであり、それを理解しサポートすることが大切です。
どうして、症状が改善しないようなら、担当医と相談して、場合によっては、治療の中断もご検討いただいたほうがいいかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- University of Michigan. (2013). Occlusion changes and sympathetic nervous system activation.
- Kyoto University. (2014). Occlusal interference and EEG alterations.
- UCL (2016). Mastication and prefrontal cerebral blood flow regulation.
- Osaka University. (2015). Occlusion, cervical muscle tension, and autonomic nervous system responses.
- Harvard Medical School. (2012). Oral discomfort, cortisol secretion, and mood instability.
- Cornell University. (2014). Long-term treatment stress and self-esteem fluctuations.


