奥歯にプラスチックの詰め物を入れたけど、噛んでも大丈夫?
2025年11月11日
みなさん、こんにちは。統括院長のドクターリョウです。
今回のテーマは、こちらです。
奥歯にプラスチックの詰め物を入れたけど、噛んでも大丈夫?
虫歯治療で、白い詰め物を入れてほしい、と希望される患者さんは年々増えてきています。
銀歯に比べて見た目が自然で、しかも保険ができるだけではなく、費用も安価。。そのため、奥歯にもコンポジットレジン修復という、プラスチックの詰め物が広く用いられるようになつまています。
実際に治療を受けられた患者さんからは、一番、不安になる方もいるのです。その不安の内容は、奥歯にプラスチックをつめたけど、強い力で噛んでも大丈夫?、プラスチックの詰め物が割れたりしませんか?、といった声も多く聞かれます。
実は、歯科医師側も心配だと考えており、割れを防ぐためにあえて噛み合わせを低めに調整する、ことがあります。実は、これが長い目で見ると全身に深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。
今回は、国内外の大学病院の研究をご紹介しながら、奥歯におけるプラスチック詰め物の耐久性、噛み合わせ、そしてその影響、健康全体への関わりについて解説していきます。
コンポジットレジンとは?
コンポジットレジンは、プラスチックにガラスやセラミック粒子を混ぜ込んだ複合材料であり、光を当てて硬化させて、歯に直接接着して使用します。
メリットは、歯を削る量が少なく、見た目も白く自然で、保険適用のため安価に治療できることです。
デメリットは、金属、セラミックと比べて摩耗や破折に弱く、長期的には劣化が絶対に避けられないことがあげられます。
特に奥歯は前歯の何倍もの噛み締める力がかかるので、コンポジットレジンの弱点がでやすいと、いえます。
大学病院の研究からみた寿命
長崎大学病院での研究(Kuboら, Dental Materials Journal, 2010)では、臼歯のコンポジットレジン修復がどの程度持ちこたえるのか、追跡したところ、5年を超えると破損や二次う蝕が増加することが明らかになっています。特に奥歯の広い面を覆う修復ほど、寿命は短くなる傾向が報告されています。
また、国内9大学病院による多施設共同研究(Hosakaら, Dental Materials Journal, 2021)でも、3年間程度の短期間では問題は少ないが、奥歯の大きな範囲の修復では摩耗や着色が目立ちました。つまり、数年は持つが、長期間の安定は難しい、いうのが大学病院の見解です。
トラブル
奥歯にレジンを使った場合、どんな以問題が起こりやすいのか?
摩耗してすり減ったり、強い力で割れたひ欠ける、吸水による変色が起きて、境目から虫歯が再発するというものです。
スウェーデンの調査(Mjör, Operative Dentistry, 2002)でも、レジン修復の再治療理由の過半数が、プラスチックを詰めたところと歯との境界からの虫歯になる、二次う蝕、であることが示されました。
甘い噛み合わせとは?
治療を行う、診療現場では、奥歯に詰めたコンポジットレジンを噛み割らないために、あえて、詰め物を今までの歯の高さより、低めに入れることがあります。この行為は、噛み込んだときに強い力が直接レジンにかからないように、割らないようにするための工夫になります。
短期的には詰め物が割れることからは、回避できるので、患者さんも、ドクターもお互いが笑顔でいられるのですが、ただ、問題が次第に出てきます。つまり、噛み合わせが甘くなることで、上下の歯がキチンと噛んだ時に接触せずに、食べ物を十分に粉砕できないという問題が生じるのです。
これを放置すると、細かく砕けないまま飲み込まれた食物は胃や腸などの、消化機関に負担をかけて、長期的には胃腸障害を引き起こす要因となることが考えられます。
また、キチンと噛めない状態、が続くことは、自律神経のバランスにも良い影響を与えません。
噛むことは単なる食物粉砕だけでなく、脳や自律神経を刺激する重要な行為であることを覚えておいてください。さらに、この十分に噛めないことが、集中力、睡眠の質、ストレス耐性にまで悪い影響を与える可能性があると考えられています。
環境ホルモン
レジンの安全性に関して、一時話題になって、最近は騒がれなくなった、環境ホルモン、の問題もあります。レジンにはビスフェノールA(BPA)由来の成分が含まれることがあり、硬化直後には、ごく微量が唾液中に検出されることがあります。
ADA、アメリカ歯科医師会は「健康に害を及ぼす科学的証拠はない」としています(Fungら, J Am Dent Assoc, 2000)。日本の小児歯科学会の研究でも、BPAは一時的かつ微量であり、数日で検出されなくなると報告されています(松村ら, 小児歯科学雑誌, 2015)。
つまり通常の治療では、心配はありませんが、妊婦や小児など感受性が高い方には、BPAフリーの材料や十分な光照射による硬化が推奨されているのです(EFSA, 2015)。
噛んでも大丈夫?
結論を申しますと、奥歯のレジンの詰め物で、噛む、ことは可能です。数年単位であれば十分に機能する可能性がありますし、、見た目も自然で費用も抑えられるため、多くの患者さんにとって魅力的な選択肢の一つです。
しかし、歯科医師が、割れることを防止のために噛み合わせを甘く調整している場合、食物を十分に粉砕できず、長い目で見れば消化器系や自律神経への影響を抱える可能性があります。加えて、摩耗・劣化・二次う蝕のリスクも避けられません。
少し、理想的なことをお話ししましたが、実際の現場では、コンポジットレジンを奥歯には詰める場合は、噛み合わせを甘くすることは必要だと考えています。
なぜなら、一度、保険でコンポジットレジンを詰めた場合、万一、患者さんがたまたま硬いものを、その場所で噛んだことでコンポジットレジンが割れると、その次の治療は保険ではなく、自費治療となるからです。
保険は病名がつかないと、適応されません。例えば、今日、奥歯にコンポジットレジンを詰めて、その日の夜に、硬いものを食べて、コンポジットレジンがかけたので、再度、コンポジットレジンを詰めるという治療は、保険ではできません。それは、病名がつかないからです。
わかりやすくいうと、コンポジットレジンの詰め物が欠けているところは、虫歯ですか?ということです。
そのような保険の謎とも思えるルールがあるために、噛み合わせは甘くする傾向があると、私は考えています。
長期的に安心したいなら
10年、20年、長く安定して使いたい、噛み合わせを犠牲にせずにしっかり食べ物を噛みたい、とお考えの方には、セラミックやゴールドを選択してください。
セラミックは硬くて変色せず、見た目もキレイです。また、適合性も比較的に高く、摩耗や劣化に強いのが特徴です。ただ、あまり強く噛むと割れるのが難点です。
ゴールドは天然歯に近い硬さで、噛み合わせに優しく、耐久性も抜群です。大学病院の長期データでも20年以上問題なく機能する症例が数多く報告されています。
ちなみに、当院の場合は、私が身体を張って、私の口の中にある被せ物を虫歯でもないにもかかわらずに、外して入れ替えて、さらに、別の素材で作った被せ物を入れ直すということをして、当院オリジナルの被せ物や、詰め物を採用しています。
つまり、セラミックも、ゴールドも当院オリジナルの素材で歯を作成しています。
自費治療で初期費用は高くなりますが、再治療のリスクや全身への負担を考えると、長い目でみると、経済的で安心な選択肢だと言えると考えています。
まとめ
奥歯にプラスチックの詰め物を入れても噛むこと自体は可能であり、、短期的には機能しますが、割れや摩耗を避けるために噛み合わせを低めに調整する場合があり、それは食物の粉砕不足から胃腸や自律神経に影響する問題を引き起こす可能性を高めます。さらに、材料の限界もあり、素材の劣化、再度虫歯になる二次う蝕の可能性も避けられません。
そのため、長期的にキチンと噛めることを望むなら、セラミックやゴールドといった材料を検討するのが賢明だと思います。
当院では、当院のトータルヘルスケアプログラム®︎を基に開発した、噛み合わせに特化した、当院オリジナルの被せ物や、詰め物もあります。
ご興味がある方は、ご連絡ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
みなさんの、未来の健康を支えるお手伝いができれび、幸いです。
制限なく、やりたいことをやる、そんな人生を、みなさんに届けたい。
統括院長 Dr.Ryo
コラムは「ウエスト歯科クリニック」と「玉川中央歯科クリニック」の両院に、それぞれ異なる内容で掲載しています。ぜひもう一方もご覧ください。
参考文献
- Kubo S, et al. Factors associated with the longevity of resin composite restorations, Nagasaki University Hospital. Dental Materials Journal. 2010.
- Hosaka K, et al. Clinical effectiveness of direct resin composite restorations using one-step or two-step self-etch adhesive systems: A three-year multicenter study. Dental Materials Journal. 2021.
- Da Rosa Rodolpho PA, et al. Clinical performance of posterior resin composite restorations after up to 33 years of clinical service. Dental Materials. 2022.
- Alonso ALL, et al. Longevity of composite restorations in posterior teeth placed by dental students: a 12-year retrospective study. Clinical Oral Investigations. 2024.
- Mjör IA. The reasons for replacement and the age of failed restorations in general dental practice. Operative Dentistry. 2002.
- Fung EY, et al. Pharmacokinetics of bisphenol A released from a dental sealant. J Am Dent Assoc. 2000.
- 松村ら. 小児におけるコンポジットレジン修復からのBPA溶出に関する研究. 小児歯科学雑誌. 2015.
- European Food Safety Authority (EFSA). Scientific opinion on the risks to public health related to the presence of bisphenol A (BPA) in foodstuffs. EFSA Journal. 2015.


